2021 Fiscal Year Research-status Report
サブミクロンの表面粗さを持つチタンが細胞機能を制御する機構の解明
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19K12798
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
右田 聖 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (00512302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマテリアル / チタン / 表面粗さ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞接着面の粗さと細胞機能との関係を分子レベルで明らかにすることを目標としている。細胞は表面の粗造化の度合いによって、接着面から異なる影響を受ける。マイクロサイズの表面粗さについては研究がなされているが、サブミクロンサイズの表面粗さについての知見は不十分である。そこでサブミクロンサイズの表面粗さに注目した研究を進めた。今年度進めた研究は以下のとおりである。 ①Wnt/β-カテニン経路が粗造化具合によってどのように変動するかを明らかにするため、GSK-3βのリン酸化の具合について検討を行った。免疫染色によってGSK-3βのリン酸化が生じている細胞を検出したところ、表面粗さ0.1~0.3μmの表面に付着する細胞では鏡面研磨表面に付着する細胞よりもGSK-3βのリン酸化が優位に低くなる可能性を見出した。 ②サブミクロンの表面粗さが与える影響は金属の種類に依存するのかを明らかにするために、チタンとコバルトクロム合金での評価を行った。その結果、コバルトクロム合金の表面粗さは細胞の初期接着数には影響を与えないが、接着した細胞の形態形成に影響を与えることが明らかになった。特に表面粗さ0.3μmの表面では、細胞が研磨痕に沿って伸展するコンタクトガイダンスが顕著に見られた。 ③表面粗さによって細胞形態が異なり、アクチンファイバーの形成にも違いがみられることから、Hippo-YAP/TAZシグナルを介した細胞機能制御が行われているのではないかとの仮説を立てた。YAPの細胞内局在を調べたところ、滑らかな表面でYAPの核内局在が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症にともなう度重なる実験中断の影響が大きく、研究が当初計画通りに進捗したとは言い難い。しかしながら、当初計画に記した目標である表面粗さに応答する転写因子やWnt/βカテニン経路におけるGSK-3βのリン酸化などが明らかになりつつあり、おおむね順調に進展していると判断した。 一方で当初計画にはなかったが、表面粗さと細胞の接着形態との詳細な関係を明らかにしたことで、YAP/TAZシグナルの関与の可能性を示すに至った。さらに、この現象が金属の種類に関係なく普遍的な現象である可能性を示しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかになりつつあるGSK-3βのリン酸化やYAP/TAZシグナルに関して、より詳細な解析を行い、確実な証拠をつかむ。 また、表面粗さとAP-1、インテグリン、GSK-3β、YAPなどとの相互関係をまとめ、本研究の総括を行う。そして次の研究展開として、そもそも細胞はどのようにして表面粗さを認識しているかを明らかにすることに挑む。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国内外の学会が中止もしくはオンラインになった。また、外部の共通機器の利用を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、取りやめた。これらの要因により、次年度使用額が生じた。 本研究における細胞の接着形態に着目した研究を推進するために、細胞形態を解析する機械学習プログラムを構築するための機器を整備する。また、オープンアクセスジャーナルに論文投稿を行い、科研費の成果を広く還元することに使用する。
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Research Products
(5 results)