2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12803
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
橋本 朋子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (10589930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 縫合糸 / 生分解 / 抗菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、シルクフィブロイン(シルク)糸を、緩やかな生分解に伴い「抗菌性分子を徐放する生分解性シルク縫合糸」として変貌させることを目的としている。 2019年度は、シルク縫合糸にアルコール水溶液処理、および各温度(105~131℃)でオートクレーブ(AC)処理を組み合わせて施した。得られた糸を用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外吸収スペクトル測定や接触角測定等により、各処理条件が縫合糸の表面近傍のタンパク質二次構造、および水濡れ性等の糸特性に与える影響について調べた。抗菌性分子固定化前縫合糸のin vitro生分解性試験として、アルコール水溶液とAC処理を組み合わせて作製した縫合糸を、それぞれリン酸緩衝液(PBS)に37℃にて浸漬し、所定日数経過後の重量変化を調べた。抗菌性ペプチドのモデル分子として、カチオン性染料であるローダミンを選択し、上記処理条件の組み合わせの下で縫合糸へのモデル分子固定化を行い、各処理と固定化率との関係性を調べた。また、得られた固定化縫合糸からのモデル分子のPBS中での徐放挙動を調べた。また併せて、縫合糸にAC処理下での固定化に適応する抗菌性ペプチド配列に関する調査を行った。 これらの評価より、高温での加熱処理はシルク縫合糸の生分解を促進し、一方、アルコール水溶液処理は糸の生分解を抑制する傾向を示した。これらシルク縫合糸のPBS中での生分解性は、各処理により変化したタンパク質の二次構造割合に起因している可能性が示された。また、高温での加熱処理によるモデル分子の糸への固定化効率向上が示された。さらに、糸からのモデル分子の緩やかな徐放挙動が認められ、生分解性と徐放性との関係性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において予定していた①シルク縫合糸への各種処理、得られた縫合糸の二次構造解析、およびペプチド配列調査、②糸への抗菌性分子固定化のモデル実験、③各処理糸の生分解性評価試験、④糸の水濡れ性評価試験、および⑤固定化縫合糸からのモデル分子徐放試験を平行して進め、それぞれ実験結果を蓄積することができた。この状況より、おおむね順調な進捗と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画に基づき、創傷治癒期間に適した生分解性、および抗菌性分子の徐放挙動を達成するため、これまでに得られた結果をふまえ各処理条件の更なる最適化を図るとともに、得られた縫合糸の各特性評価を進める。 また、使途に適したペプチド配列の選定・設計を進め、決定した配列のペプチド合成を行い、得られたペプチドの高温耐性などの特性評価を行い、縫合糸への固定化につなげる。 並行して、ラット皮下への縫合糸埋入、in vivo生分解性評価試験の予備検討を進める。
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