2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of elucidation of therapeutic approaches and pathological mechanisms for tissue fibrosis using glycoside-bearing polymers
Project/Area Number |
19K12804
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊勢 裕彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10324253)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝線維化 / コラーゲン / αSMA / N-アセチルグルコサミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、N-アセチルグルコサミン糖鎖高分子(AC-GlcNAc)の筋線維芽細胞に対する遺伝子発現変化を網羅的に検討したところ、AC-GlcNAcには、p53遺伝子を活性化して筋線維芽細胞のコラーゲンやαSMAの発現抑制やMMP1の発現上昇などの筋線維芽細胞の線維化亢進を抑制する作用が見出された。これらの遺伝子発現変化について、細胞表面ビメンチンからのシグナル伝達経路を検討したところ、p38MAPKを活性化してp53の発現上昇からSTAT3のリン酸化抑制を引き起こしコラーゲンやαSMAの発現抑制が実行されることが明らかになった。そこで、これらの現象が生体のどのような生理現象に類似しているのかについて検討するために死細胞によって誘導される組織修復機構に着目した。死細胞から漏出するO-GlcNAc化タンパク質を筋線維芽細胞に投与したところ、AC-GlcNAcで観察される遺伝子発現変化と非常に類似した挙動が観察された。これらのことから、組織傷害時に死細胞から漏出するO-GlcNAc化タンパク質が、筋線維芽細胞の細胞表面ビメンチンと相互作用して組織修復に関与することが想定された。そして、このような筋線維芽細胞の遺伝子発現変化から、AC-GlcNAcの生体における線維化への影響を検討した。四塩化炭素誘導肝線維化モデルマウスにAC-GlcNAcを尾静注で投与して、線維化肝臓におけるコラーゲン量をピクロシリウスレッド染色やヒドロキシプロリン定量によって検討した。その結果、AC-GlcNAc投与による線維化肝臓におけるコラーゲン抑制が観察され、AC-GlcNAcによる線維化の改善が期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
AC-GlcNAcの筋線維芽細胞に対するシグナル伝達経路の解明やコラーゲン抑制のメカニズムを解明することができた。また初期段階ではあるが、線維化モデルマウスにおける線維化の治療効果を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、AC-GlcNAcによる線維化改善効果を詳細に検討していく。AC-GlcNAの肝臓内での活性化星細胞の標的化の評価や投与量など最適な治療効果の検討を行う予定である。さらに細胞骨格分子ビメンチンの細胞表面出現及びGlcNAc結合活性の生理的な意義の解明を実施していく。特に死細胞から漏出するO-GlcNAc化タンパク質の生体自身の有する組織修復機構の解明を行っていく。そして、これらのことを踏まえ、肝線維化の進行と自然治癒のメカニズム解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
本年度では、抗体などの研究用試薬を購入したが、残額が新たな試薬の購入には不十分であったため残額が生じた。次年度では、この残額と併せて、研究用の試薬や実験動物の購入などに充てていく予定である。
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Research Products
(9 results)