2019 Fiscal Year Research-status Report
骨芽細胞動態解析による軟骨原基を起点とした骨形成過程の解明と応用
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19K12807
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河合 克宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00553653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / ライブセルイメージング / 骨形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨形成過程における骨芽細胞動態解析を行うため、当初の計画より長期間のイメージングを実現するため、Col1a1プロモーター下でGFPを発現するマウス骨芽細胞に加えてGFPを安定発現する培養骨芽細胞株MC3T3-E1を用いることとし、遺伝子導入、セルソーターによる細胞分離により安定GFP細胞株の樹立に成功した。これにより、現在50時間程度までのライブセルイメージングが実施可能となった。そこで、細胞動態解析としてまず、マウス頭蓋骨由来の骨片上での細胞動態とインプラントを模したポリエチレンフィルム上での細胞動態を比較検討した。骨片およびフィルム上にGFP安定発現MC3T3-E1細胞を培養し、正立共焦点レーザー顕微鏡上のインキュベータ中で50時間のイメージングを行い、得られたデータに基づき画像解析ソフトIMARISにより細胞トラッキング解析を行った。その結果、骨片上での細胞の平均移動速度は、フィルム上での平均移動速度に比べて有意に遅いことがわかった。さらに、各細胞の移動速度の変動分布を比較したところ、骨片上の移動速度の変動はフィルム上に比べて、有意に大きいことがわかった。このことは、フィルム上では細胞が比較的速い一定速度で移動するのに対し、骨片上では移動、停止を繰り返す様な、比較的遅い不均一な移動をすることを示している。よって、骨片の様な比較的骨形成に適した表面と考えられる“場”においては、足場表面と骨芽細胞との相互作用により、骨芽細胞の移動速度を低下させる分子メカニズムが存在し、これにより骨形成が促されている可能性がある。また、石灰化軟骨中に骨形成の優れた足場となる物質が存在するという作業仮説に基づき、石灰化軟骨を多く含むブタ大腿骨成長板から、複数の処理により粗抽出画分を得た。この粗抽出画分を培養容器表面にコートし、骨形成試験を実施した結果、骨形成を有意に促進することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GFPを安定発現する骨芽細胞株(MC3T3-E1)の樹立に成功し、50時間程度までの長時間イメージングが可能な実験系が確立し、骨片およびフィルム、チタンプレート上でのイメージングが実現した。さらに、細胞の移動速度が骨形成の“場”を評価するための指標となる可能性を見出した。さらに、石灰化軟骨由来成分による骨形成促進に関しては、現段階では粗抽出画分ではあるが、培養骨芽細胞に対して骨形成促進効果があることを見出しており、標的分子の分離精製を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立したGFP安定発現MC3T3-E1細胞を用いた細胞動態解析系を用いて、既存および新規の表面コート剤および表面形状が細胞動態に及ぼす効果を検証する。また、細胞動態解析と平行して、in vitroでの骨形成試験を行い、骨形成能と細胞動態の相関関係を明らかにする。 石灰化軟骨を起点とする石灰化促進分子の探索に関しては、現在精製分離過程を進めており、最終段階での分子同定に関してはマススペクトロメトリーによる質量分析が専門の神戸大学、波多野直哉先生の協力のもと解析を進める。 石灰化軟骨の特徴的な形状に着想した、表面パターン加工に関しては、紫外線硬化型液状シリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン、PDMS)をモデル材料とし、メカノバイオロジー研究に基づく生体材料の設計が専門の東京都立大学のシステムデザイン学部、三好 洋美先生の協力のもと実験を進める。 さらに、骨芽細胞による骨形成において、破骨細胞の関与が重要な要素である可能性が示唆されており、破骨細胞による骨吸収によって形成される吸収窩および、その構成成分が骨芽細胞による骨形成に及ぼす効果についても解析する。
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Research Products
(5 results)