2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of an antibacterial nanomaterial using of a biological essential element
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19K12811
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
古薗 勉 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (30332406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 慶直 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (90333509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハイドロキシアパタイト / 生体内必須元素 / アナフィラキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚を貫通する経皮デバイスの感染防止技術は、カテーテルや人工臓器等の開発において不可避の課題である。我が国特有の抗菌薬含浸カテーテル使用によるアナフィラキシーショック発症や耐性菌発現の懸念のため、未だに経皮デバイスの開発が立ち後れているのが現状である。そこで本研究課題では、アナフィラキシーショックを惹起せず、万が一細菌感染が生じたときに抗生物質の使用を許容可能とするため、体内必須元素(亜鉛イオン)に着目し、独自技術であるハイドロキシアパタイト(HAp)ナノ粒子製造技術および界面ナノコーティング技術を用いた新規な抗感染性ナノ材料を開発し、新たな切り口から抗菌メカニズムの解明を目指す。 本研究課題の第2年目における実験計画では、以下3項目の達成を目的とした。カテーテルカフ素材として用いられているポリテトラフルオロエチレンシートにグラフト処理を行い、静電的相互作用でZn-HApナノ粒子をコーティングした。その表面被覆率は95%以上であった。また、このシートを用いて大腸菌による抗菌性試験を実施した結果、ノーマルHApコーティングシート群に比較して高い抗菌性を有することを明らかにした。次に、生理的条件下でZn-HApナノ粒子からのZnイオン徐放試験を行った(32週)。その結果、Znイオンはほとんど徐放されないことが見出された。最後に、ヒト肥満細胞株(HMC-1)を用いたヒスタミン定量試験により、Zn-HApナノ粒子のアナフィラキシー(様)反応性を評価した。Zn-HApナノ粒子添加群では肥満細胞株単独およびノーマルHApナノ粒子添加群と同等であり、ヒスタミン分泌を促進させる薬剤であるコンパウンド48/80およびクロルヘキシジンより有意に低い値を示した。この結果より、Zn-HApナノ粒子はアナフィラキシー(様)反応を惹起させにくい物質であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年目の研究計画において、Zn-HAp高分子複合化、Znイオン徐放試験、およびアナフィラキシー(様)反応試験の3項目を実施することとした。高分子複合化が可能なことが、コーティングに好適なナノ材料としての重要なポイントであった。ポリアクリル酸をコロナ放電処理にて高分子基材上にグラフト重合した界面を作製できたこと、またZn-HApナノ粒子の分散性が向上できたこと、さらにはアナフィラキシー(様)反応試験の最適化が可能となったことが、本年度の研究計画がおおむね順調に進展した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度にZn-HApナノ粒子の高分子複合化法の確立、Znイオン徐放挙動の確認、さらにアナフィラキシー(様)反応を惹起しにくい材料であることを明らかにした。本研究課題の最大の目的は、当該ナノ粒子の抗菌性メカニズムの解明であり、その達成に向かって予め計画していた方針に従って研究を進める。
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