2020 Fiscal Year Research-status Report
咬合に伴う外耳道の形状変化に基づく次世代イヤホン型咬合力計測装置
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19K12828
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
谷口 和弘 安田女子大学, 家政学部, 教授 (30448047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 敦 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20283731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 咬合力計測 / イヤホン型センサ / 外耳道 / 光学式計測 / 機能的電気刺激 / カルマンフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、口にセンサや装置を入れることなく(口に食べ物を含んでいても計測できる)、咀嚼筋(頬関節や側頭筋など)の動きを阻害することがなく、使用方法が簡単であり、簡便な装置(イヤホン型センサと小型マイコン)で咬合力を計測できる装置の開発を目的としている。まず2019年度は、「咬合力」と「外耳道の動き」を同時計測できる実験装置の開発とその実験結果を用いて外耳道の動きから咬合力を推定する手法の研究開発を行った。開発した実験装置を用いて、5名の被験者から「外耳道の動き(独自に開発したイヤホン型センサを用いて計測した値)」と「咬筋の表面筋電位(EMG)」、そして「咬合力(GM-10、長野計器)」の同時計測を行った結果、イヤホン型センサ値と咬合力のピアソンの積率相関係数に強い相関関係が確認され、EMGの影響を取り除いたイヤホン型センサ値と咬合力の偏相関係数には相関関数が確認された。2020年度は、2019年度の科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)実施状況報告書(研究実施状況報告書)(令和元年度)の「8.今後の研究の推進方策」に示した計画通り、2019年度の研究成果を活用して、以下の2つの研究に取り組んだ。 (1)咬合力の推定精度の向上を目指した推定手法の改良。 (2)本研究で開発した実験装置により噛みしめを計測し、それをトリガ信号として、把持動作を再現させる機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation、FES) システムの研究。 (1)については、咬合力の推定精度の向上を目指した推定手法の改良にカルマンフィルタを活用して取り組んだ。(2)については、噛みしめをトリガとした把持動作を再現する FES システムの開発に成功し、その研究成果を日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2020にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の進歩状況として「(1)咬合力の推定精度の向上を目指した推定手法の改良」については、イヤホン型センサを左右の外耳にそれぞれ装着し、その左右の測定値をカルマンフィルタにより統合し、推定精度を向上させる方法を検討した。その結果、外耳道の動きの計測結果のみで咬合力の推定が可能となるほどの精度の向上には至らなかった。しかし、本年度開発した「イヤホン型センサの左右の測定値をカルマンフィルタにより統合する技術」は、本年度は十分な結果が出なかったものの、本技術にはまだ検討の余地があるため、本年度の研究成果を生かして継続して研究を行うことで、推定精度向上を目指す。また、推定精度向上を目指して、イヤホン型センサの改良も並行して行っていく。 「(2)本研究で開発した実験装置により噛みしめを計測し、それをトリガ信号として、把持動作を再現させる機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation、FES) システムの研究」については、噛みしめをトリガとした把持動作を再現するFESシステムの開発に成功した。このFESシステムを用いて、「中指の中手指節(metacarpal phalangeal、MP) 関節における最大随意収縮時の筋活動と噛みしめ動作の間に何らかの関係性がある」という仮説を立て検証実験を行った。その結果、噛みしめ有りの場合の筋活動と指先力が噛みしめ無しの場合と比較すると有意に差があることが示された。このことから把持動作と噛みしめ動作の間に生体的な関係性が示唆された。 以上の通り、(1)の研究については今後も継続して行う必要があるものの、(2)については十分な研究成果が出ており、全体としておおむね順調に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き推定精度の向上を目指して、下記の(1)および(2)を行う。これらの研究成果が出た場合、外耳道の動きの計測結果のみで咬合力の推定が可能な「イヤホン型咬合力計測装置」の試作を行う。また「咬合力計測」の次の研究課題である「嚥下計測」の可能性や同装置の性能比較・評価系インタフェースの開発についても検討を行う。 (1)咬合力の推定精度の向上を目指した推定手法の改良(2020年度の継続) (2)咬合力の推定精度の向上を目指したイヤホン型センサの改良
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Causes of Carryover |
2020年度は、2019年度の成果に基づく大規模な被験者実験を予定していたが、新型コロナウィルス蔓延の影響を受け、ほぼすべての実験を中止・延期せざるを得なくなった。これらの実験遂行のための装置製作費および謝金等の諸経費をそのまま2021年度に繰り越している。基本的には当初の被験者実験を2021年度に改めて行うことを予定しているが、社会情勢も見ながら、実験データ解析・評価のための人件費等に移行することも検討する。
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