2019 Fiscal Year Research-status Report
温度制御式反復温熱刺激による骨芽細胞分化誘導法の検討
Project/Area Number |
19K12839
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨並 香菜子 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (10815351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
洪 光 東北大学, 歯学研究科, 教授 (70363083)
工藤 忠明 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50431606)
林 陽平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (00588056)
泉 哲 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (20835368)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 温熱刺激 / 前骨芽細胞 / 増殖 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らはこれまで、培地温度を制御する独自のシステムを用い、神経分化モデル細胞に対し温度制御式反復温熱刺激(略称:TRTS)を負荷し、この刺激のみで神経細胞分化を誘導する方法を開発した。しかし、前骨芽細胞の骨芽細胞分化におけるTRTS の作用は全く不明である。そこで本研究計画では、上述の培地温度制御系を用い、前骨芽細胞株の骨芽細胞分化に与える影響やその機序の解析を実施し、これによりTRTS を活用した細胞環境温度制御による低侵襲かつ安全な骨芽細胞分化誘導法を開発し、またその分子機構を解明することを目指している。 代表者らは、TRTS のみで骨芽細胞分化誘導が可能か否かを検討するにあたり、まずTRTSの適切な負荷条件を明らかにするための実験を行った。具体的には、通常培養下の前骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1 細胞にTRTS を負荷し、位相差顕微鏡による細胞数計測により細胞生存率を評価した。その結果、加熱プレート温度42°C以上でTRTSを負荷した場合、第2日目以降増殖が抑制され、特に45°CのTRTS負荷では第1日目にして大部分の細胞において細胞死が誘発された。これに対し、39.5°CのTRTSを負荷した場合、37°Cの培地で通常培養した陰性対照群と比較して、第1日目には増殖細胞が有意に増加し、第3日目にはおおよそコンフルエントに達した。このことからTRTS(39.5℃)が前骨芽細胞株の増殖機構に対し、促進的影響を与えることが示唆された。今後は、今回得られた結果をもとに、前骨芽細胞の骨芽細胞分化におけるTRTS の影響を評価するとともに、本年度研究にて代表者らが初めて確認した、TRTSによる前骨芽細胞様細胞の増殖促進誘導現象における分子的なメカニズムについても検討を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度の研究計画を行った結果、TRTS負荷時の細胞生存率を評価する実験までは、概ね計画書通りに進行した。しかしながら、予想とは異なり、細胞の増殖促進効果が認められたため、当初の計画を変更し、各温度条件下でTRTSによる細胞増殖促進作用の有無を評価した。したがって、今年度は骨芽細胞分化の評価にまでは至らなかったものの、現在までの達成度としては、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回までの研究結果をもとに、当初の計画であったTRTS のみで骨芽細胞分化誘導が可能か否かを検討する。TRTS のみで骨芽細胞分化誘導が困難な場合には、骨芽細胞への分化誘導に通常使用される液性因子として骨形成因子(BMP)を培地に添加し、TRTS を同時に負荷した場合に骨芽細胞分化率がより促進されるTRTS負荷条件を明らかにする。 上記計画と並行して、本年度研究にて確認した、TRTSによる前骨芽細胞様細胞の増殖促進誘導現象についても、より詳細な負荷条件を調査し、その分子的なメカニズムの解析も検討する。MC3T3-E1細胞に発現するとされる温度感受性Transient receptor potential (TRP)チャネル分子群や、Heat shock protein (HSP)が骨芽細胞分化・増殖の制御に関与する可能性を、PCR 法、RNA 干渉法およびウェスタンブロット法を用い検討する。
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