2020 Fiscal Year Research-status Report
Estimation method of three-dimensional position of guidewire and quantitative index to determine adequate guidewire-operation
Project/Area Number |
19K12843
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
森 浩二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40346573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管内治療 / 3次元位置推定 / X線画像 / 応答性 / 再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,血管内治療中のX線画像から,ガイドワイヤーなどの血管内治療用デバイスの3次元位置を推定する方法を提案し,これに関して,以下の2つの目的を掲げている.①この位置推定法の精度や,精度を支配する要因を明らかにする.②血管内での適切なデバイス操作(押す/引く,右/左回転)を判断するための指標を開発する. 前者について,2019年度までは,ガイドワイヤー先端の1点のみの位置推定を行っていたが,この手法を,多点に展開すれば画像に映ったガイドワイヤー全体の形状を推定できることに思い至り,それを実現した.数値計算の結果を正解値とした検証実験を行い,形状誤差をハウスドルフ距離で評価した.その結果,約0.3 mm程度のズレでガイドワイヤー全体の3次元形状を1方向から撮影した画像で再構築できることを明らかにした. 後者については,指標として,手元とで与えた操作量に対するガイドワイヤー先端の移動量に注目し,血管形状と提案する指標の関係について調べた.血管内治療で良く起こる事故の一つとしてジャンピング現象に注目し,それを実験で再現した.その過程を上述の方法で評価し,ジャンピングは4つの段階に分かれることを発見した. そのほかには,ガイドワイヤー単体だけではなくカテーテルと連携させた状態での応答性を実験で評価できるように実験系を構築した.最後に,回転操作に関して基礎的な実験を行い,ガイドワイヤー先端部と血管壁の接触状況よりも,先端を除く最遠位部での接触が回転操作に影響していることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,2019年度に作製した実験系(X線画像撮影と等価な実験系の構築)を用いて,認知技術の開発(画像に映ったデバイス形状全体の3次元形状を再構築する)を行った.それを発展させて,ジャンピングと呼ばれる血管内治療で見られる事故の状況を実験で再現して,それが発生する前後でのデバイス形状の様子を,上述の手法を使って評価した. その結果,一般に想定されるジャンピング現象の起こるずっと前から,デバイス先端の応答性(手元で加えた操作量と先端の移動量の比)が徐々に低下し,次いで,デバイスのひずみエネルギーが徐々に増加することが分かった.これらがさらに続くと,一般的に知られているジャンピングが発生する.したがって,応答性(の低下)とひずみエネルギー(の増加)をモニターすれば,ジャンピング現象の随分前からその予兆を捉えらることが期待できる.予兆を捉えることが出来れば,必要な操作について判断することができるので,この発見は,判断技術の向上に貢献する. また2020年度開始時に問題点として挙がっていたガイドワイヤーとカテーテルの連携についても実験に着手しており,両者の連携が応答性におよぼす影響について調べた.当初の予想と反して,カテーテルをガイドワイヤー先端に一定距離以下に近づけても応答性は向上しないことを定量的に明らかにすることができた.これらのことから,おおむね順調に進展しているという判断が適切であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,おおむね順調に進展していると判断している.2021年度は,判断技術の開発を行う計画になっている.2020年度は,回転操作に関する実験を取得してもそのデータを整理する方法に問題が生じていると述べたが,それにはガウス過程回帰という手法を導入することによって,複雑な現象(複数の説明変数が存在する現象)でも整理できるようになった.2021年度は,このガウス過程回帰を用いて,実験および数値計算を併用して,様々な状態(様々な形状にガイドワイヤーが挿入された状態)における応答性を網羅的に調べていく予定である.この手法を用いて,血管形状の特徴と回転操作の応答性を整理し,どのような形状の場合に回転操作を与えることが効果的であるかという関係を明らかにする.これによって回転操作を与えるべき血管形状を定量的に判断できるようにする. 認知,判断,操作を統合するシステムを2021年度に作製する予定にしている.これに関しては,試作段階だが,認知技術を複数のPCで分散処理させるシステムを,ROS2というミドルウェアを用いて構築している.この分散処理システムに,さらに判断を担当するPCを連結し,さらに操作コマンドを発生させるPCを連結する予定にしている.ROS2を使った分散処理の手法自体はすでに確立しているので,2021年度においては,技術的ハードルは高くないと見込んでいる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,新規作製をする予定の実験装置の作製に遅れが生じた.実験自体は,研究室に保管している既存品で代用できたので,実験自体の遅滞はなかった.2021年度は,様々な血管形状とそこに挿入されたガイドワイヤーの応答性の関係を網羅的に調べる計画なので,調査する血管形状の種類(試作)数を,当初計画よりも多くする.また実験効率を上げるために,もう一台,同等の実験ができる実験系(カメラやそれを取り込むことができるPCなどから構成される)を構築し,より詳細な調査を短時間で行うことに割り当てる予定である.
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