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2021 Fiscal Year Research-status Report

カントにおける非理想理論としての国際法論--暫定的領有権の構想

Research Project

Project/Area Number 19K12919
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

金 慧  千葉大学, 教育学部, 准教授 (60548311)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords自由主義 / 啓蒙 / 専制
Outline of Annual Research Achievements

2021年度における研究成果として、18世紀学会からの依頼で「自由主義と啓蒙」と題する論説を執筆した。そこでは、18世紀以来の政治的かつ経済的な自由主義の系譜が啓蒙とどのような関係にあるのかを考察した。具体的には、まず18世紀末から19世紀にかけて政治的な立場として成立する自由主義の思想家にはさまざまな特徴が見られるが、そうしたなかでも専制批判という共通点があること、また専制に対する批判には人民の政治的かつ精神的な自律の擁護が結びついている点で自由主義とカントの啓蒙観との間に密接なつながりがあると指摘した。
しかし、こうした自由主義の立場には、保守的な論客はもとより、自由主義に親和的な立場の論者からも、個人の自由な活動が無秩序をもたらすのではないかという批判が寄せられた。こうした批判に対する自由主義の思想家の応答を見るためにアダム・スミスとJ・S・ミル議論を検討した。スミスの議論において、自由な経済活動を行う個人は、長期的な目的のために自己規制という徳を行使しうる個人でもあり、自由主義がもたらしうる無秩序への防壁としてスミスは個人が備える一定の徳に訴えていると論じた。また、ミルの議論においても、公共精神や自制という概念が重要な役割を果たしていることを指摘し、自由主義は決して個人の自由な活動を擁護するという思想ではなく、かつてカール・シュミットが指摘したように、自由から調和が生じるという「形而上学的体系」としての性格を持つと論じた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新型コロナウィルスの影響で当初の予定よりも遅れている。2021年度の成果は「自由主義と啓蒙」であり、本論文は『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版、近刊)に所収の予定である。

Strategy for Future Research Activity

今後は、カントの国際法論が理想理論と非理想理論という複数の側面を持つことをカントのテクスト内在的に論証する論文を執筆することが最優先課題であり、今年度はこの課題に取り組む。具体的には、『永遠平和のために』と『人倫の形而上学』のテクストの分析をつうじて、国際法にかんするカントの複数の見解を整理し、そこに理想的な国際法論、伝統的な国際法論、さらに移行期の国際法論が存在することを示す。そのうえで、「予備条項」と呼ばれる箇所が移行期の国際法論に対応し、その主題が正義の輪郭を描くことにあるのではなく、不正義への対応にあると指摘し、領土の不正な取得という不正義の問題に対してカントがどのような応答を行っているのかを考察する。

Causes of Carryover

前年度に引き続き、新型コロナウィルスの影響で研究室に行くことが困難な場合があったために予定通り研究が進まず、とりわけ旅費の使用が困難であったことから次年度使用額が生じた。

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Published: 2022-12-28  

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