2021 Fiscal Year Research-status Report
Research of Schelling's philosophy and its inheritances and developements in the phenomenology
Project/Area Number |
19K12921
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小田切 建太郎 山梨大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40802278)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 現象学 / 倫理 / 自然 / シェリング / ハイデガー / ひきこもり / 自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の本研究の研究実績を説明する。発表「ハイデガーにとってシェリングとは」では、ハイデガーの1937/38年演習におけるシェリングへの論及を主題的に取り上げ、その内容を精査し、ハイデガーとシェリングの関係を論じる先行研究では取り上げられることのなかった両者の一側面に光を当てた。この発表をひとつの足がかりとして、論文「自由をめぐる初期ハイデガーにとってのシェリングの意味」を執筆した。これは「自由」の概念をめぐって、従来ほとんど気づかれてこなかった『Sein und Zeit』の書き換え時期における『Freiheitsschrift』からの影響を明らかにしている。また関連する倫理学的研究として、発表「自由の観点から見たひきこもりに関する試論」を行い、論文「疎外と抵抗ー関係性から見たひきこもり」にまとめた。これによりケアの倫理の提唱者C.Gilliganの『Joining the Resistance』における「疎外」と真木悠介の「疎外」を当事者の語りの解釈に応用し、ひきこもり理解の更新を図った。また発表「An Attempt to Make Sense of Hikikomori」を行い、『Sein und Zeit』の日常性分析を手がかりに、ひきこもりの置かれた状況を素描した。発表「ひきこもりに関する現象学的解釈の試み」では、ひきこもり当事者の語りを、ハイデガーの「原事実性(Faktizitaet)」概念によって現象学的に解釈することを試みた。これにより従来精神医学・臨床心理学・社会学の研究がとりこぼしていたひきこもりの実存論的・存在論的側面に光を当てた。論文「ひきこもりから無縁の倫理、あるいは野生の倫理へ」(『狂気な倫理――「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定』)では、当事者の語りの示唆する積極的意味(=方向性)から無縁の倫理ないし野生の倫理を構想した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度(2020年度)には新型コロナウィルスの影響により、予定していた発表がすべて無期延期となったり、同じくコロナウィルスにより研究環境の変化を余儀なくされたりしたことから研究の進展が滞っていたのに対して、2021年度はオンラインで学会が開催されるようになったこと、また研究環境も改善してきたことから、研究を順調に進めることができるようになってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続き現象学系の基礎的な文献研究を継続し、これをもとにして応用倫理学的なひきこもりに関する哲学的・倫理学的研究を、社会学や心理学を交えて展開していく。
|