2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research of Schelling's philosophy and its inheritances and developements in the phenomenology
Project/Area Number |
19K12921
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田切 建太郎 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (40802278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自然 / 自由 / 倫理 / ケア / ひきこもり |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、学会発表「Intelligible Tat und Faktizitaet: Zum frueheren Heidegger und Schelling」を行なった。本発表では、初期ハイデガー哲学における「事実性(Faktizitaet)」の問題と、シェリングがカントから継承した「叡智的所行(Intelligible Tat)」の関連に関して、後者から前者への影響可能性を模索しつつ、両者の事象的異同を明らかにすることを目指したものである。つぎに、小西真理子・河原梓水編著『狂気な倫理――「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定』所収論文「ひきこもりから無縁の倫理、あるいは野生の倫理へ」を公刊した。本論文では、現代の日本における「ひきこもり」経験者の語りに基づきつつ、その語りが示唆する倫理的態度(生き方)の(網野善彦の無縁論などを参照しつつ)「無縁の倫理」として解明し、それが示唆する「居場所」の性格を「無縁の場所」という形で提示した。これは、シェリングやハイデガーの言う「放下(Gelassenheit)」に関わる「自由」の問題の現代的解明及びハイデガーの現象学が言う「隠されたもの」であると同時に「自ずから立ち上がるピュシス(=自然)」としての「存在」の倫理的研究の将来における展開を念頭に置いたものである。つぎに、同様の意図から、学会発表「生きづらさの空間――ある語りにもとづいて」と、学会発表「居ることあるいは居場所の自由のために」をおこなった。本研究は全体として、主にハイデガー現象学とシェリング哲学の研究から出発したが、ケアの倫理などを経由することで、結果として現代における人間的生の抑圧状況やその自由の可能性に関する解明も行うことになり、一定の成果を得ることができた。今後はこの成果を下敷きにしてこれを更に展開していく研究を行うことになる。
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