2019 Fiscal Year Research-status Report
A Clinical-Philosophical Research on Addictive Relationship and Family "Pathology"
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19K12922
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小西 真理子 大阪大学, 文学研究科, 講師 (30793103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嗜癖 / 依存 / 関係性 / 家族 / 臨床哲学 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)調査:嗜癖的関係性における従来の見方(依存(症)、支配・服従、暴力などの一元的なとらえ方)を問いなおすため、関連する現場で調査を行った。具体的には、虐待された経験をもつ人や児童相談所の勤務経験がある人へのインタビュー調査・ギャンブルに問題を抱える人びとの支援施設ワンデーポートでのイベント参加および施設と関係する当事者の方々へのインタビュー・パチプロの方々へのインタビュー・ベルリンにおけるBDSMスタジオの調査とドミナへのインタビューを行った。(研究成果の一部は、『現代思想』および関西大学倫理学研究会電子ジャーナル『倫理学論究』にて論文化、および立命館大学先端総合学術研究科SOGI研究会にて口頭発表した。ただし、成果のほとんどは蓄積中の段階にある)。 (2)家族研究:嗜癖的関係性が内在する家族に焦点を当て、嗜癖的関係性やその関係性にある個人が一般に「病理」的と見なされることでこそ生じていしまう問題点や、それを病理と見なすことそれ自体の論理的不整合性について明らかにした。既存の「正常」な家族像の恣意性が問われることになり、その恣意性によってこそ苦しめられる人びとの声やその人びとへの偏見が露わになる。今年度からは、特に親から虐待された経験のある人について焦点を当てている(研究成果として、The Korean Philosophical Society's Fall Conferenceおよび東アジア臨床哲学会議にて口頭発表し、『立命館文学』にて論文化、『現象学年報』にて報告書として発表した)。 (3)社会への還元:研究成果を(広い意味での)研究業界のみではなく、市民や社会へ講演や対話の会といった形で還元した。(ワンデーポート主催のセミナー、岡山意思決定支援センタービーユーフォーラム、〈ケア〉を考える会など) (4)受賞:以上の成果と関連して、大阪大学賞(若手教員部門)を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、調査および文献研究によって進められるものであるが、今年度はその双方ともが順調に進んだと言える。特に、フィールドおよびインタビュー調査として、パチプロやドミナの方々の声に触れさせていただけるようになったことは、本研究にとって計画当初想定していなかった想像以上の機会だった。このことは今後のことも含め、本研究の発展に大きく貢献してくれたと言える。調査の大半は蓄積の段階にあるが、調査から刺激をうけるなど、関連した(文献)研究成果は順調に公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年2月以降、社会状況(感染症)の影響から、予定されていたこれらの調査の一部を中止しなければならなかった。今後もこの状態が続く場合、特に(まだ関係性を確立するに至っていない)海外調査の遅延が危惧される。
また、私が研究してきた嗜癖的関係性にある家族で生きる人びとや、「規範の外の生」を生きる人びとが、今の社会の状況によって、大きな負の影響を受けざる得ない状態にあることが明らか(あるいは、あからさま)であり、このことが何を意味するのかを(直接言及するかどうかに関係なく)真摯に受け止めながら研究に取り組む必要性を強く認識している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、2020年2月および3月に予定していた関東圏へのフィールドおよびインタビュー調査が実施できなかったため。この調査は、コロナウィルスの収束後に直ちに実施する予定にある。翌年度以降の助成金は、前述の調査に加えて、当初の予定通り執行するつもりであるが、コロナの影響次第では、更なる調整が必要になる可能性も否めない。
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