2020 Fiscal Year Research-status Report
A Clinical-Philosophical Research on Addictive Relationship and Family "Pathology"
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19K12922
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小西 真理子 大阪大学, 文学研究科, 講師 (30793103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暴力 / 虐待 / SM / ケア / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)虐待をめぐる世代間連鎖の言説研究:世代間連鎖、すなわち、親の問題をその子どもが引き継ぐという言説について、アメリカにおける被虐待児の研究の系譜をたどり、精神分析的言説の影響や、優生思想の影響について検討した。世代間連鎖の言説の有害性を指摘しつつ、同時に、その言説を全否定するのではなく、その言説のなかで生きるさまざまな状況下におかれる個人の語りを否定しない道を探ることを目的とした。本研究成果は、将来的にある論文集に掲載予定である。 (2)SMと暴力・虐待の研究:DVや虐待の現場では、暴力の加害者のもとを離れなかったり、加害者の行為を正当化する被害者が存在するが、その理由は、被害者が加害者に支配されているためであることが実践でも研究でも訴えられてきた。そのような言説をときに都合の悪い形で覆してしまうSMの実践やSMをめぐる言説から学ぶことで、上記言説のそとに存在する人びとの存在を示唆するための試論を行い、『臨床哲学ニューズレター』vol.3に掲載した。 (3)社会への還元:研究成果を(広い意味での)研究業界のみではなく、市民や社会へ講演や対話の会といった形で還元した。(〈ケア〉を考える会など) (4)受賞:昨年度執筆した論文「攻撃性をともなう依存者へのケア」(『立命館文学』vol.665)が第14回社会倫理研究奨励賞審査委員賞を受賞した。本論文は、自閉症の息子に殺害され、息子を施設に預けなかったためケアの失敗者として報道されてしまった母親トルーディが残した「手紙」「エッセイ」「論文」を頼りに、彼女が訴えようとしたことを報道とは別のまなざし-トルーディの視点に特権を与えたまなざし-から考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナの影響によって、予定していたフィールド調査やインタビュー調査、海外活動の大半を進めることができなかったが、その間、文献調査を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、研究実績の概要の(2)の成果をさらに進めることで、SMの共著出版を実現させようと考えている。 第二に、引き続き、大人になった被虐待児が抱える葛藤に分野横断的な研究蓄積や当事者の語りを通じて光を当てることで、被虐待児の訴えのなかで、まだ現代(特に日本)で光りを当てられていないものを可視化することを行っていきたいと考えている。 第三に、2020年度に進めることができなかった、依存症関連のフィールド調査を再開することができればと考えている(ただし、コロナの状況による)。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、フィールドおよびインタビュー調査の実施ができなかった。この予算は、次年度のフィールド調査にて使用する見込みである。
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