2019 Fiscal Year Research-status Report
Status and Range of Fictional Statements in Karl-Otto Apel's Discourse Theory
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19K12923
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嘉目 道人 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10761215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超越論的語用論 / 討議倫理学 / 言語行為論 / 虚構的言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カール‐オットー・アーペルの討議理論の再検討、特に虚構的(フィクション的)言説を適切に扱い、現代社会における様々な言語現象に説明的および規範的にアプローチすることを目指している。
当初の計画では、初年度は言語学・美学・文芸学など隣接諸分野の知見を深め、その成果を『Philosophia Osaka No. 15』(2020年3月)に論文として発表する計画であった。しかし、内容が期待していたものと異なったために当初計画していた海外での美学系の学会聴講を中止する一方で、国内の哲学系の学会を多く聴講したことなどの影響により、当該分野の知見の深まりは、予想していた程度とバランスからは外れたものになった。 そのため当初の計画を変更し、『Philosophia Osaka』誌には、討議における二人称的なパースペクティヴの相補性の重要性に関する論文“Die Reziprozitaet der Perspektiven als ein Unterschied zwischen innerem und oeffentlichem Diskurs”を発表した。一方、言語行為論との関連においては、本研究の着目する発語媒介的要素の追究を準備するものとして、発語内的否定を扱った論文「妥当要求の普遍性と発語内的否定」を『メタフュシカ 第50号』(2019年12月)に発表した。特に後者は試論的な内容であることから、今後の発展が見込まれ、本研究課題の実質的な進捗に資するものだと言える。 研究実績としては他に、共著『Palgrave Fichte Handbook』(Palgave Macmilan, 2019)を刊行した。これは本研究課題に直接取り組んだものではないが、アーペルの討議理論および背景的知識としてのドイツ古典哲学についての知見の深まりを反映した内容になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を遂行するためには、討議理論や隣接諸分野の研究動向を広く踏まえる必要がある。本年度は、「若手研究における独立基盤形成支援」に採択されたこともあり、5月の日本哲学会大会(首都大学東京)をはじめ、10-11月の“Workshop: The Paradox of Autonomy”(フランクフルト大学)、11月の日本カント協会大会(拓殖大学)、日本フィヒテ協会大会(上智大学)に出席し、多くの知見や情報を得ることができた。また、8月の「ワークショップ『ビデオゲームの世界はどのように作られているのか?』」(大阪成蹊大学)に出席したことで、言語哲学と美学の接点に関する知見を深めることができた。しかし、2月以降に多くの学会が中止となったこともあり、聴講を通じての隣接諸分野についての情報収集は必ずしも予定通りに進まなかった。 一方で、資料収集に関しては、哲学および関連諸分野の文献を計画以上に多く購入することができた。ただし、内容の吟味には相当の時間を要すると考えられる。 以上のことから、文献の吟味の進捗によっては、本研究が今後期待以上に進む余地はあると言えるが、依然として学会聴講の見通しが立たないこともあり、現時点では計画よりもやや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年5月上旬現在、国内外を問わず、依然として各学会の聴講の可能性は不透明である。一方で、2019年度に「若手研究における独立基盤形成支援」に採択されたことにより、資料の収集は当初の計画以上に順調に進んだ。 したがって、本研究課題をなるべく遅滞なく推進する上では、今後は学会聴講を通した情報収集よりも、資料の吟味を通じた知見の獲得に重点を切り替えることが必要であると考えられる。 討議理論を中心とする哲学に関しては、2019年度においても順調に知見を深化させることができた。それゆえ、2020年度は、特に言語学・美学・文芸学方面での知見の獲得を優先していく方針である。
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Research Products
(3 results)