2020 Fiscal Year Research-status Report
Status and Range of Fictional Statements in Karl-Otto Apel's Discourse Theory
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19K12923
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嘉目 道人 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10761215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超越論的語用論 / 討議倫理学 / 言語行為論 / 虚構的言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カール‐オットー・アーペルの討議理論の再検討、特に虚構的(フィクション的)言説を適切に扱い、現代社会における様々な言語現象に説明的およ び規範的にアプローチすることを目指している。 当初の計画では、当年度は主に国内の学会に出席し、成果発表を目指すことになっていた。しかし、前年度に美学・言語学分野の知見を深める計画に遅れを来したことや、COVID-19の影響で国内外の学会への出席がままならなかったことなどもあり、年度前半に準備を要することの多い、学会での成果発表は見送らざるを得なかった。 一方、当年度には『メタフュシカ』もしくは『待兼山論叢』への寄稿も計画していたが、こちらについては計画通り、『待兼山論叢』第54号哲学篇に「発語媒介効果の不可逆性とフィクションの倫理的責任」と題した論文を寄稿することができた。これは、オースティンの言語行為論の観点から虚構的言説がはらむ倫理的問題を考察したものである。 さらに、年度後半に研究が順調に進展したことから、2021年度に予定していた『大阪大学大学院文学研究科紀要』への寄稿を前倒しし、同61巻に"Racist Utterances as Quasi-fictional: Rethinking Habermas's Theory of Strategic and Dramaturgical Actions"と題した論文を寄稿した。これは、差別的言説を一種の疑似虚構的言説と位置付け、ハーバーマスのコミュニケーション的行為論およびサールのフィクション論に即して考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
依然としてCOVID-19の影響が深刻であり、学会等の聴講が順調に行ったとは言い難いが、支払いの前倒しを申請したことにより多くの資料を購入することができ、隣接諸分野の知見を一定程度得ることができた。2020年度に発表した2論文は、いずれもアーペルの討議理論そのものではなく、オースティンやハーバーマスの理論を踏まえて、解決すべき問題の提示と整理を行ったものである。これらの研究成果により、前年度生じていた研究計画の遅れは、ある程度挽回できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2021年度は、これをアーペルの討議理論と突き合わせて検討するとともに、討議における二人称性といったこれまでに論じてきた問題をも踏まえ、議論を全体的に総括することが目標となる。なお、その成果の一部は関西哲学会第74回大会にて口頭発表し、同学会機関誌『アルケー』への掲載を目指すこととするが、依然としてCOVID-19の影響が大きいため、その他の成果発表の機会は臨機応変に模索することとする。Philosophia Osakaへの寄稿は、その候補の一つであろう。
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Research Products
(2 results)