2021 Fiscal Year Annual Research Report
Status and Range of Fictional Statements in Karl-Otto Apel's Discourse Theory
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19K12923
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嘉目 道人 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10761215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超越論的語用論 / 討議倫理学 / フィクション / ヘイトスピーチ / 遂行的矛盾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツにおける哲学の言語論的転回および語用論的転回をユルゲン・ハーバーマスとともに主導した、カール‐オットー・アーペルの討議理論を再検討するものである。 前年度までは、アーペルの討議理論の再検討、およびハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論や言語行為論といった関連する諸理論の関連する議論の検討を通じ、虚構的言説をどう捉えるかについての予備的考察を行ってきた。 最終年度に当たる2021年度は、それらを踏まえた上で、アーペルの討議理論の観点(そしてその延長上)から虚構的言説(特に差別的言説)をどのように捉えることができるのかを考察した。 英語論文"Limiting the Communication Community : A Transcendental-Pragmatic View on the Harm of Discriminatory Utterances (1)"(Philosophia Osaka (17))では、差別的言説が一般に二人称的なものと三人称的なものに分類できることを指摘した上で、前者はアーペルの討議理論における中心的な概念の一つである「遂行的矛盾」に直接該当する一方、より社会の深層に浸透し根深い差別的構造を維持・再生産しているのは後者であると論じた。そして三人称的な差別的言説をある種の虚構的言説として退けることの可能性について考察を加えたが、議論が多岐にわたったため、本号にはその一部のみを投稿し、今後継続的に発表していくこととした。 また、前年度に発表した論文「発語媒介効果の不可逆性とフィクションの倫理的責任」の内容に関して、ジュディス・バトラーの言語行為論理解と突き合わせて検討する機会を設けたい旨の依頼を受け、新たにレイ・ラングトンの議論との接続を図った内容を口頭で発表した(第11回大阪哲学ゼミナール)。 なお、新型コロナウィルスをめぐる社会状況を受け、当初計画にあった学会参加は、オンラインのものを除いて基本的には断念せざるを得なかった。
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Research Products
(2 results)