2020 Fiscal Year Research-status Report
On Applying Moral Theories in Kant. Exception, Collision of Duties, and Discrimination
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19K12929
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石田 京子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (80736900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カント / 倫理学 / 法哲学 / 理論の実現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「カントにおける道徳理論の適用の問題――例外・義務の衝突・差別」は、理論を事例に適用する際に生じうるであろう道徳的な難問を分析・解決するための方法論を、法哲学もふくめたカント実践哲学に即して提示し、その有効性と限界を画定することを目的とする。またそのことを通じ、功利主義や徳倫理学とは異なる形式主義的・厳格主義的な規範理論としてのカント実践哲学の意義を確認することも、目的としている。2020年度は主に、カント法・政治哲学上の理論の実現の問題に関する研究の成果発表を行った。2020年11月にオンラインで開催された日本カント協会大会の共同討議でパネリストを務め、カントの法哲学あるいは政治哲学という文脈において、『永遠平和のために』や『諸学部の争い』などの著作を参照しつつ、カントがカント的な理念が実現される可能性について、どのように論じているかを発表した。当該の研究においては、カントは法と倫理を厳密に分離しており、一般的なイメージに反して、理念の実現のために、市民に道徳的であることを求めておらず、卓越主義的な市民的共和主義とは一線を画している一方、言論の自由や学問の自由、それを保障する社会制度の確立が、理念の実現に資することを確認し、啓蒙と倫理の違いについて考察した。それ以外にも、2020年8月と2021年1月にそれぞれオンラインで開催された「大阪哲学ゼミナール」でも、カント法哲学研究の現状に関する報告や、法哲学における理念の実現に関する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、2020年度は、予定していたドイツでの発表はできなかった。理論の実現可能性に関して、当初予定したものとは別のアプローチによって研究を遂行することになったことと、また基本的人権とカント哲学との関係についての研究を始めたことにより、例外や差別の問題については2020年度はあまり進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの2020年度に引き続き2021年度も、研究の成果発表は2022年度に延期あるいはオンラインで行う予定である。また、当初の研究計画を変更し、2021年度はまず現代の基本的人権とカント法哲学との関係についての研究を行い、カントの法哲学における人権概念と基本的人権との関係や、尊厳や自律といったカント的概念が基本的人権を基礎づけるかどうかについて検討することにする。その後で、「暫定的な権利」に関する二次文献に当たりながら、カント法哲学における理論の実現可能性についてさらに考察を進める予定である。2022年度は、以上の研究を遂行するために必要な機材や文献の購入を行うことにしている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、2020年度は予定していた発表が、国内外すべてキャンセルかオンラインになったため、支出が大幅に減ってしまった。2021年度も旅費がかなり減ることが予想されるが、オンライン関連の機材の支出や文献の購入のみへの支出を予定している。
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Research Products
(4 results)