2021 Fiscal Year Research-status Report
On Applying Moral Theories in Kant. Exception, Collision of Duties, and Discrimination
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19K12929
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石田 京子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (80736900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カント / 基本的人権 / 法哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカントと人権概念の関係についての予備的研究を実施した。この問題についての近年のカント研究および基本的人権に関する哲学的な先行研究に基づき、次の三つの問題を検討した。一つ目は、基本的人権をどのように基礎づけるかという問題であり、二つ目は、基本的人権は自然権としてみとめられるか、それとも市民権でなければならないか、という問題で、三つめは、どのような種類の基本的人権が存在するのか、という問題である。 第一の問題でよく取り上げられるのは、尊厳概念や自己自身に対する義務からの人権を基礎づけるという試みである。しかし、このような試みはカント自身のものではなく、道徳主義を招来する恐れがあり、多くのカント研究者が考えるほど望ましくもない可能性があること、そして、第一の問題よりも、第二と第三の問題を検討することの方が、人権とカントとの関連を論じるにあたってはより重要であることを明らかにした。さらに、本課題に関する今後の検討では、先行研究ではこれまであまり顧みられてこなかった問いや側面に光を当てることが重要視されるべきであることを示した。そのような問いや側面に含まれるのは、たとえば、権利の保護を要する受動的な存在者としての人格をどのように法哲学において位置づけるべきか。特定のだれかの行為によってではなく社会構造によって困難な状況に置かれてしまっている人々は、どのような意味において権利を侵害されていると言えるのか。その人々が苦境を脱するためにはどのような権利を認められるべきか。どのような財にたいするニーズが基本的なものとして認められるべきなのか、などである。以上の研究成果については、三田哲学会哲学・倫理学部門例会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの全世界的なパンデミックの影響で、本年度も外国への渡航および研究発表、意見交換ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は前年度に引き続いてカントと人権の研究を実施し、また道徳的進歩の可能性という問題においてカントの歴史哲学や実践哲学が有する意味について、検討するつもりである。 引き続き海外渡航は困難なため、海外の研究者との意見交換等は対面では実施しない。
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Causes of Carryover |
国外出張と国内出張がすべてなくなったため。次年度もどの程度出張が可能であるか見通せないため、書籍や物品購入に支出する予定である。
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Research Products
(2 results)