2022 Fiscal Year Research-status Report
On Applying Moral Theories in Kant. Exception, Collision of Duties, and Discrimination
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19K12929
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石田 京子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (80736900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カント / 実践哲学 / 法哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は日本哲学会第81回大会(九州大学)でのシンポジウムにおいてパネリストとして登壇し、「人類の道徳的進歩とは何か――カント哲学からの一考察」というタイトルで発表を行った。この発表において、道徳的進歩という概念が、目的論的・歴史哲学的な意味において理解されるべきであり、これから起こる出来事の理論的予測とはみなされることはできないということ、むしろ、進歩の可能性を提示することによって義務を果たさなければならないということを確証するという実践的な意義をもつことを明らかにした。 また、2022年度は、R・モサイェビ編『カントと人権』の翻訳を出版した(監訳・共訳)。この共訳作業を通じて、通俗的な理解と異なり、カント哲学のなかには現代的な意味での人権概念は見られないという見解をめぐる現代の研究状況について、理解を深めることができた。また、普遍的な原理に従ってすべての人の自由と平等を保障するという点では同一であっても、近代自然権的な源流をもつ人権概念や、ジョン・ロールズの政治的リベラリズムの構想に強く影響された人権概念と異なる第3の人権概念をカントは提示しているということ、またその違いが国家や世界が個々人の権利を保障するのに果たす役割や位置づけが異なってくるということが明らかになった。このことにより、普遍的原理の適用をめぐる本研究を今後遂行するにあたって基盤となるような知見を獲得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、予定していたドイツでの発表を行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、国内外での発表および他の研究者との意見交換の場を対面で持つことを予定しており、人権や法哲学をめぐるこれまでの研究成果を発表することを考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度まではコロナ禍で国内外への出張ができなかったため、使用できなかった。次年度は国内外への出張(発表予定あり)を予定している。
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Research Products
(2 results)