2020 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける中絶解放の思想研究 身体所有から中絶の権利へ
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19K12933
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
相澤 伸依 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (80580860)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リプロダクティブライツ / フランス / 中絶 / セクシュアリティ / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ禍のため、フランスで新たな資料を集めることができなかった。それゆえ、入手済みの資料を用いて、次の二つの観点から研究を進めることとなった。第一は、フランス哲学と中絶解放運動との関わりを探る研究である。特に中絶解放運動に積極的に関わった哲学者ミシェル・フーコーを取り上げ、中絶解放運動とフーコー思想の関わりを解明することを試みた。その成果は、「フランスの中絶解放運動とフーコー -GISの活動から」と「懲罰社会のその先へ -フーコー『懲罰社会』をめぐる一考察」の二論文にまとめて公表した。前者においては、中絶解放運動の概要を解説しつつ、フーコー思想における運動へのコミットメントの意義を論じた。国内ではフランスの中絶解放運動についての先行研究が乏しい中、新奇な知見を提供するものである。後者においては、フーコーが中絶解放運動にコミットしていた時期に当たる1973年の講義録を分析し、近現代社会における中絶をフーコーがどのように位置付けていたかを示した。 第二は、中絶解放運動の歴史を辿る研究である。特に、19世紀後半から20世紀初頭にかけてジャーナリスト活動及び政治活動を行ない、フェミニズムの先駆けとも目される女性セヴリーヌを取り上げた。彼女は、堕胎罪への反対と中絶の権利の保障を訴え、1890年に「中絶の権利」というテキストを公表した。このテキストを翻訳し、中絶解放運動の一つのルーツを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、コロナ禍のため、フランスで新たな資料を集めることができなかった。それゆえ、入手済みの資料を用いての研究に止まらざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が続く中、2021年度のフランス渡航も困難だと予想される。ついては、国内から可能な範囲での資料収集を行い、分析の対象を広げることを試みたい。 研究成果の公表について、2020年度に予定した国際会議での発表がキャンセルとなってしまった。論文の形で迅速に公表することを目指したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、支出計画に大幅な変更が強いられた。特に、フランスでの国際会議発表がキャンセルになったこと、渡航しての資料収集が困難になったことの二点が、次年度使用額が生じた主たる理由である。 本年度も渡航は難しいと考えられるため、海外からの資料取り寄せに支出し、研究を進めることとしたい。
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