2022 Fiscal Year Research-status Report
1950年代から1960年代の日本における子どもの人体実験に関する歴史研究
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19K12935
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
吉田 一史美 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80736869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 医学研究 / 人体実験 / 日本 / 子ども / 生命倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では戦後の医学研究における人体実験について、社会的弱者を対象とした事例に注目して歴史的検討を行う。とくに「子ども」、すなわち乳児、幼児、学齢期の児童を対象にした日本国内の医学研究を扱う。令和4年度は、前年度に行なった結核・脳炎の医学研究および予防衛生政策を中心に、さらに文献調査をすすめた。19世紀末に国内外ではじまった結核治療を目的とした臨床研究の動向から、近代医学の萌芽期にみられた日本における子どもを実験対象とした医学研究の特異性を検討した。さらにそうした事例を、日本の貧民施療における官費入院制度、学校衛生や乳児死亡率に関わる諸政策の歴史的文脈の中に位置づけることを試み、現代日本の社会福祉に通底する構造的問題を分析した。これまでの文献調査により、戦前・戦中・戦後を通して、国立の研究機関、大学病院、公立病院、学校などの公的な組織の連携のなかで展開した、新生児・乳児・幼児・小中学生を対象にした医学研究事例の存在を確認している。日本の近代医学史において実験対象とされた子どもたちが集団として医学者との接点をもちえた契機、また戦後の日本社会で子どもが「社会的弱者」という集団として出現するプロセスの検討をすすめ、これらの医学研究の歴史的系譜が現代の医学・医療にたいして提起する倫理的問題について考察を行なった。今後の計画では、これまでの言説分析および考察で得られた結果をあわせて研究成果として発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスが流行していた影響で、予定していた個々の事例に関する地方調査活動を実施できなかった。しかし、当初予定していた歴史研究の対象から年代を広げて文献調査を行なったことで、戦前の複数事例を含めた歴史学的アプローチの考察が可能になり、これらの調査・考察をまとめて成果発表が可能な段階まで研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでの事例研究を補完する行政文書や稀少な文献資料の収集・調査を国立国会図書館や各種文書館等にて引き続き行うほか、成果発表に向けて、戦前・戦中・戦後の子どもを対象とした医学研究事例の歴史的系譜が、現代の医学・医療にたいして提起しうる倫理的問題について考察を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスが流行した影響で、当初予定していた東北地方および東海地方を含めた特定地域の個別事例に関する調査等を、計画通りに実施することができなかった。今後の研究期間において成果発表を行うための旅費等として次年度に使用する予定である。
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