2023 Fiscal Year Annual Research Report
1950年代から1960年代の日本における子どもの人体実験に関する歴史研究
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19K12935
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
吉田 一史美 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80736869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 医学研究 / 人体実験 / 日本 / 子ども / 生命倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では戦後の医学研究における人体実験について、社会的弱者を対象とした事例に注目して歴史的検討を行う。とくに「子ども」、すなわち乳児、幼児、学齢期の児童を対象にした日本の医学研究を扱う。 令和5年度は、日本の結核研究および予防衛生政策を中心に文献調査をすすめ、成果発表を行った。日本における/日本人が行なった子どもを対象とした人体実験について、結核研究を主軸に歴史的アプローチで検討した結果、以下のような考察が得られた。日本の近代医学の始まりにおいて、国家を挙げて行われた集団的なツベルクリン検証実験では、子どもに対する実験が象徴的な事例となっていた。旧日本軍による細菌兵器の研究では中国人兵士などの成人男性の人体が多く用いられたのに対して、第四性病やハンセン病の病原体も研究対象とした結核班では、女性および子どもをつかった研究が行われたと考えられる。満州国内の研究機関においてさまざまな実験が子どもに対して行われ、それらの人体実験は子どもを対象とした日本の戦後の結核予防政策の徹底に帰結した。この研究成果を令和5年12月に開催された生命倫理学会第35回年次大会にて発表した。 1950年代から1960年代の日本においては、乳児の大腸菌実験や乳糖投与実験、幼児のクル病実験、小学生の栄養制限実験、小・中学生の人工心肺による手術という事例が存在する。これらの事例に通底する社会的弱者としての「子ども」の存在は、乳児死亡率や学校衛生が問題化する近代医学成立期から第二次世界大戦後にかけて、実験医学の対象に位置付けられていた。
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