2019 Fiscal Year Research-status Report
In Defence of Naturalistic Metaethical Theory through Explaining the Normativity of Morality
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19K12938
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
蝶名林 亮 創価大学, 文学部, 講師 (10802184)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタ倫理学 / 規範性 / 自然主義 / 非自然主義 / 欲求 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は道徳の規範性の説明を通じて自然主義的なメタ倫理説の擁護を目指すというものである。道徳の規範性とは、「守る意思がないのに約束をしてはならない」「幼児虐待を減少させる政策を考案するべきだ」などの文にあらわれる「ならない」「べき」によって表現されるわれわれに何らかの行為を促すものである。この規範性の本性やその有無について、現代のメタ倫理学では様々な論争があるが、本研究が目指すのは、これら「ならない」「べき」の内実をさらにわかりやすい概念によって詳しく説明することが可能であることを示し、その実在を擁護するというものである。 本年度は本プロジェクトの準備的な研究を行い、これまでの自然主義者の試みを調査し、その研究成果をまとめたもの編著者をつとめた著作中の収録論文という形で公表することができた。また、この研究成果に基づいて自然主義者による規範性の新たな説明理論の可能性を模索し、その成果を国内外の学会発表にて公表することができた。 本年度の研究では規範性を欲求という観点から説明しようとする試みについて検討し、その可能性と問題点を整理した。今年度の研究成果で明らかになったことは、欲求によって規範性を説明しようとする試みは近年の論者たちによって当初抱えていた問題を回避できることが示されつつあるが、だが、競合する欲求の優先順位を巡る問題など、まだ解決しなければならない難問が残されていることが明らかになった。 また、今年度は本研究の質を高めるために必要となる研究会を国内外から研究者を招聘する形で実施することもできた。さらに、当該分野の最新の研究成果が発表される国外の学会にも参加し、近年の研究上の動向をつかむこともできた。それらにより、今後の研究を進める上で重要となるより研究者間のネットワークの構築も進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は概ね予定通り進捗している。当初の計画では、今年度は「自然主義者からの諸提案の調査・整理を行う」となっていたが、予定通りにこれを行い、さらに、その研究成果を編著書の収録論文という形で公表することができた。また、それに基づき、現在の自然主義的な説が抱える問題点についても研究を進め、学会発表という形で公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「関係する哲学諸分野・諸科学分野における知見の調査・整理」を行うことになっているが、基本的にはこの方針に従い、研究を進めていく。具体的には、今年度の調査で明らかになったKate Manneの自然主義的な理論の問題点を克服し得る自然主義的な理論の構築を目指し、関係する諸分野における知見の整理(具体的には、心の哲学や声に関する科学的知見の調査及び整理)を行っていく予定である。
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