2019 Fiscal Year Research-status Report
The Formation and Development of the Pancaraksa in Indian Esoteric Buddhism
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19K12950
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
園田 沙弥佳 目白大学, 社会学部, 助手 (20834857)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インド後期密教 / パンチャラクシャー / マハーマーユーリー / マーリーチー / 『サーダナマーラー』 / 女神 / 陀羅尼 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である2019年度は、インド後期密教における「五護陀羅尼明妃」と他の女神信仰の特色と比較考察することで、五護陀羅尼経典が女尊として神格化された際の信仰上の機能および図像的特色を明らかにした。比較対象として、五護陀羅尼明妃と同時期にインドで普及した女尊であり、かつ、陀羅尼としても知られているマーリーチー(摩利支天)を主に取り上げた。また、ターラー女尊の脇侍としてのマハーマーユーリー(孔雀明妃。神格化された五護陀羅尼明妃の一尊)とマーリーチーの成就法も考察対象に加えた。研究方法として、インド後期密教経典に属する『成就法の花環』(SM Nos. 89, 91, 104, 116, 132~147, 197, 201, 206)と『完成せるヨーガの環』(NPY Nos.17, 18)等を用いて翻訳研究を中心に進めた。マハーマーユーリーとマーリーチーは初期の図像的特色を持つターラーの成就法中に登場しており、仏教女尊の中でも早い段階で成立したと考えられること、また、両者は天体・天候と関係することから天災による諸問題を解決する機能が期待されていた可能性等について考察した。また、SM No.134の和訳を発表した。使用テキストはBhattacharyaのSMテキスト校訂本(1968年)を底本とし、サンスクリット写本に東京大学所蔵写本No.451、京都大学所蔵写本No.119、チベット語訳にデルゲ版 No.3524等を参考にした。本研究にあたり京都・高野山に出張し、京都大学所蔵梵文写本マイクロフィルム等の資料および現地調査をさせていただいた。他に現地資料調査や研究成果発表、シンポジウムの聴講等、研究上の知見を得るため出張した。以上の研究成果は、日本印度学仏教学会学術大会、東洋大学東洋学研究所の研究発表例会で口頭発表を行い、『印度學佛教學研究』『東洋学研究』において論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は五護陀羅尼信仰の研究について、女尊マーリーチーの成就法に見られる特色と比較検討することで、神格化された五護陀羅尼明妃の機能の特色について明らかにすることができた。研究成果は9月に佛教大学で開催された日本印度学仏教学会学術大会、および10月に開催された東洋大学東洋学研究所の研究発表例会で口頭発表を行い、12月発行の『印度學佛教學研究』、2020年3月発行の『東洋学研究』(いずれも査読有り)において論文発表を行うことが出来た。また、研究成果の発信やオープンアクセス化に対応するためWebサイト(https://sonoda.skr.jp/)を作成した。以上のことから、本研究課題は概ね当初の予定どおり進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はカルマヴァジュラ著『大寒林陀羅尼』『大護明陀羅尼』注釈書の内容構成の把握、および、サンスクリット・テキスト系統、チベット語訳系統の五護陀羅尼経典との比較検討を通じて、五護陀羅尼経典の構成について研究を進めたい。当初計画していた研究調査のための海外出張は世界情勢を鑑みて変更する。研究方法についてはチベット語訳を中心にサンスクリット写本、漢訳、図録等の文献資料を用いて翻訳研究を中心に進める。研究成果は『印度學佛教學研究』『東洋学研究』等にて論文発表を行い、一般公開の研究発表会等において口頭発表を行う。なお、2020年度は英語論文での発表を予定しているため、外部委託費を計上している。追加の検討課題としては、研究成果の発表方法のあり方である。これまでシンポジウムや研究発表会の現場に赴くことで最先端の研究に触れることができたが、昨今の世界情勢から、研究成果発表の場に変化を余儀なくされている。現時点で、当初予定していた研究成果発表の場が新型コロナウィルス対応等のためオンラインでの開催を検討されており、最新の状況に対応できるよう環境を整え、オンラインでもわかりやすく発信する技術を向上させるとともに発表内容を工夫したい。
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Research Products
(5 results)