2021 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会における「不活動・準不活動神社」の実態と地域文化に与える影響
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19K12957
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
冬月 律 麗澤大学, 外国語学部, 講師 (70726950)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不活動神社 / 過疎地神社 / 人口減少社会 / 限界集落 / 宗教文化 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、今年度も計画していた調査研究を思う通りに実施することができなかったが、関連学会や研究会等で中間報告を行ない、今後の計画及び次年度の成果発表などを検討した。 具体的には、調査対象地である高知県と新潟県において、まず高知県では中山間地域である仁淀川町の3つの地域の宮司と氏子を対象に、地域神社の実態調査および氏子調査を実施した。年度末に実施したために、結果は今年の5月以降を待たねばならないが、調査結果からは神社運営の実態や課題、とくに本課題研究の核となる不活動神社(現在祭祀や信仰活動が行われていない状況にある神社)と準不活動神社(現在高齢化した氏子によってギリギリの状態で運営されており、将来後継者にも不安を抱えている神社)の状況が把握できることが期待できる。また、一昨年度の実施報告でも取り上げた、仁淀川町において廃村に伴い不活動状態にあった神社(氏神)が、地域出身者によって復活した事例については、さらに昨年度10月に追加調査を実施した際に、より詳細な情報を得ることができ、本事例が神社の消滅が地域文化に与える影響を考察する上で好事例となることを再確認した。 次に、コロナ禍の影響で何度も実施の延期を余儀なくされていた新潟県での調査を11月に実施することができた。新潟県神社庁を訪問し、神社庁関係者の協力を得て、新潟県における神社の概況をはじめ、県下の小規模神社や不活動神社の現況と対策などに関する情報と資料の提供をいただいた。 以上のように、昨年度はコロナ禍の影響により文献・資料収集を中心としていたが、今年度はようやく高知県で人口減少と高齢化が激しい地域を対象に実態調査を実施することができた。さらに、新潟県でも同様の地域神社を対象にした調査が可能になったことにより、次年度にはそれらの調査結果の分析を行なうほか、報告書作成および関連学会や研究会での発表も進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年計画の3年目としてこれまでの調査研究の成果をまとめたかったが、コロナ禍のため、計画通りの調査研究を実施することができなかった。やむを得ず、次年度への1年間の継続研究を申請した。昨年9月に、2年間の中間報告として、日本宗教学会第80回学術大会(開催校関西大学、オンライン開催)にて研究発表を行なった(『宗教研究』第95巻別冊、2022年所収)。また、所属機関での年次学術大会(9月)や、国際学会(7月)においても成果の一部を中心とした研究発表を行なった。いずれの研究発表においても人口減少、神社の不活動または準不活動化、地域文化への影響などに関する質疑応答が行われた。とくに、発表者による不活動神社と準不活動神社の捉え方が、既存の教団(神社本庁)側と国による不活動宗教法人のそれとは異なる点について議論が深められたのは幸いである。 今年度は、昨年度実施できなかった高知県を中心とした調査票調査が実施中であることと、新潟県でのパイロット調査も実施でき、調査研究再開の見通しも立っていることから、1年延長を申請した。 コロナ禍によって遅れていた研究の進捗を取り戻しつつ、それらの調査研究をもとに、最終年度の課題研究を仕上げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の2020年度の影響を鑑み、2021年度には事前に計画を調整したものの、計画通りの調査を実施することができなかった。しかし、本課題研究を遂行するうえで最も重要な調査の実施することができた(予定を含めて)ことから、可能な範囲で調整を図りながら当初予定の成果を挙げられるよう進めていく。具体的には、二つの対象地のうち、高知県についてはネット環境が完全に整っていない中山間地域での実地調査は依然として厳しい状況にあるなか、現地の調査協力者と電話会議を重ねた結果、当初の予定よりは遅くなったが、3月には実態調査を実施することができたため、6月以降には結果分析と追加調査を中心に行なう。一方で、新潟県についても、延期を余儀なくされた実地調査も実施でき、さらには今後の個別調査の見通しも立っている。 このように、2022年度には、2021年度までに実施することができなかった調査研究を進めるとともに、これまでに収集した情報の整理と、調査結果の分析・考察を行なう予定である。そして、調査研究の成果を報告書としてまとめるほか、成果を関連学会等で報告・発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)2021年度に実施予定していた現地調査については新型コロナウィルス感染症の影響で中止となり、次年度に変更したため。 (使用計画)2022年度は、2021年度に実施できなかった実地調査が可能になったことから、コロナ感染対策を徹底した上で短期間の調査を行ない、当初の予定の成果を挙げられるよう進めていく。高知県では現在実施中の調査票調査の結果を分析し、必要に応じて追加調査(インタビュー調査)を実施し、詳細な情報を収集する。新潟県では個別調査を実施し、準不活動神社の状況を把握していく。これまでに収集・整理してきた不活動神社関連記事を含め、これらの調査研究の成果を報告書(冊子刊行)としてまとめる。
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Research Products
(4 results)