2020 Fiscal Year Research-status Report
明治思想史における「政教分離」―国学・神道とキリスト教による解釈の比較を通して―
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19K12958
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齋藤 公太 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (40802773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 政教分離 / 明治思想史 / 国学 / 神道 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期日本の人々が「政教分離」を理解する際に依拠していた基本的な解釈枠組みを、思想史的観点から国学・神道とキリスト教における「政教分離」解釈を比較することによって解明することを目標とするものである。第二年次にあたる令和2(2020)年度は、前年度に選定した研究対象人物の「政教分離」解釈の特質を明らかにすること、また関連文献の調査や翻刻を行うことを主たる目標としていた。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、関連文献の購入と資料の分析を中心に研究を進めた。 研究成果としては、第一に、ナショナリズムや「信教の自由」との関係性も視野に入れ、より広い枠組みから明治期の「政教分離」解釈をとらえていくこととし、前年度選定した具体的な人物について研究を進めた。すなわち植村正久における「信教の自由」とナショナリズム、神道観の関係について、また小崎弘道の「政教分離」解釈と政教関係論に関して研究を進め、下記の公開研究会と日本宗教学会の学術大会で成果を発表した。そのほか海老名弾正や内村鑑三といったキリスト教思想家についても研究を進め、特に内村鑑三不敬事件が今後調査すべき重要な対象として浮上した。 国学・神道関係については、明治期の「政教分離」の表われとされる国家神道と教派神道の関係性について、国学者・井上頼国の動向に着目しながら研究を行い、また、昭和期に及ぶ対象であるが、国学と真宗の思想との結合を試みた仏教者・暁烏敏についても比較対象として研究を行った。これらの成果は論文としてまとめ、下記の論集に掲載された。 また、海老名弾正の『国民道徳と基督教』や『新国民の修養』といった著作に収録されている論説をデジタルテキスト化し、下記のウェブサイトで公開した。海老名は重要な人物でありながら全集が刊行されておらず、研究が進展していないため、この成果は今後の研究状況の改善に資するものと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも触れたように、本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初計画していた資料調査や、研究協力者を雇用してのデータ作成などは行うことができなかった。そのため若干計画を変更し、関連文献の購入と資料の分析に注力することとなった。そのような問題は生じているものの、研究成果の発表や、デジタルテキスト化した資料の公開などは行うことができ、おおむね計画通り研究は進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実績報告書でも述べたように、「政教分離」という概念そのものが明治期の文献において直接見出されることが少ないということが明らかになったため、今後も「信教の自由」やナショナリズムとの関連を視野に入れ、より広い枠組みのもとで明治期の「政教分離」解釈について研究を進めていく予定である。 また、第三年次も新型コロナウイルス感染拡大の影響により、出張による資料調査や研究協力者の雇用は難しいと予想される。その場合は資料の購入による収集と論文の執筆に注力し、海老名弾正関連資料などのデジタルテキスト化と公開も自分自身で行っていきたい。
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Research Products
(5 results)