2019 Fiscal Year Research-status Report
古代世界の共同体意識―シリアのユダヤ‐キリスト教関係を中心に―
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19K12961
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大澤 耕史 中京大学, 国際教養学部, 助教 (40730891)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユダヤ教 / キリスト教 / シリア / 聖書解釈 / アイデンティティー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時の研究計画調書通りに、一年目の2019年度は古代世界のユダヤ教文献における異教徒の描かれ方についての調査に着手した。数ある単語の中で特に「異邦人」と訳されることの多いgoyに着目し、ヘブライ語聖書(≒旧約聖書)におけるその意味・用法を確認するところから始めた。まずそこまでの結果としては、この語が一義的に「非ユダヤ人」に限定されるわけではなく、時にはユダヤ人も含めた広い人類一般をさすこともあるということである。つまり、「異邦人」の分析として様々な文献におけるgoyの用法を無条件にその対象に含めることはできないということが明らかとなった。このことから、まずヘブライ語聖書におけるgoyの用法ごとに場合分けを行い、そのそれぞれにおける二次的な言及を分析するという新たな作業の必要性が生じた。研究計画時には想定していなかったこの段階を経ることにより、goyに限らないすべての単語の使用例の分析がより重層的になると予想される。 以上を踏まえて聖書時代以降、特に古代末期のユダヤ教の聖書解釈とシリア教父の著作に見られるgoyの用例の収集にも着手した。当該年度中に分析が完了した箇所においては、ヘブライ語聖書における意味・用法を忠実に踏まえた言及がほぼすべてであったが、そこから派生してシリア語でgoyに対応する’amma/’ammeが、goyの翻訳ではない箇所でどのような意味で使われているのかも広く視野に入れておく必要があるという認識に至った。事実、シリア教父の中にはこの語を明確に異なる意味で使い分けている者もおり、著者ごとによる違いも重要な分析要因として認識する必要があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プライベートな事情により研究時間が減少する事態が生じたため、当初の予定よりも単純な分析件数が少なくなってしまっている。ただし致命的なほどの遅れではないため、状況が落ち着いてきたのにつれて研究時間の確保もできるようになり、今後の挽回は十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の若干の遅れを考慮しつつ、研究計画通りに進めていく。いずれにしても分析対象は膨大な数にのぼるため、研究が進むにつれてこれまでの遅れの割合は相対的に低くなることが予想される。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大防止のために中止になった学会・研究会への出張旅費、および同じ理由により国際郵便物の遅延が生じ、当該年度に入手できるはずであった図書資料費が計上できなかったために差額が生じた。おもに二次文献を中心に必要な資料はほぼ限りなく生じるため、図書購入費用にあてるのが中心となる。
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