2021 Fiscal Year Research-status Report
奄美大島南部におけるノロ祭祀継承の現代的展開ー神社との相互交渉に注目してー
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19K12964
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
町 泰樹 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (30725693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ノロ祭祀 / 地元新聞 / まなざし / 奄美の神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、2019年度から2020年度にかけて奄美大島南部のノロ祭祀に関する概略調査を行い、2021年度はそれをもとにノロ祭祀の継承のタイプ別重点調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染流行に伴って、現地調査が困難となったこと、2019年度までの現地調査の感触やその後の先行研究の読み込みによって、当初の見込み以上にノロ祭祀が断絶している状況が明らかとなったため、2020年度の段階で研究の方向性を変更した。 変更した点は、研究の方法で、もともとはインタビュー等をメインにした現地調査を予定していたが、これを地元新聞紙の記事収集を中心としたドキュメントリサーチへと変更した。研究手法の変更に伴って、ノロ祭祀の継承に関して、ノロ本人やノロの子孫の立場から記述するのではなく、ノロ祭祀が新聞記事という社会的な文脈においてどのように捉えられているのか、という現地社会のノロ祭祀へのまなざしにスポットを当てることとした。 今年度(2021年度)は、こうした2020年度までの研究手法の変更を踏まえ、継続して新聞記事の収集を行った。収集した新聞記事は、新聞社1社の昭和30年代の分である。この時期は、ノロ祭祀そのものが取り上げられた記事はほとんどなかった。わずかにあったノロやノロ祭祀に関係する記事としては、地元の郷土研究グループによってノロの祭祀具(衣装や扇)が発見されたという記事がほとんどであった。また、奄美大島の歴史を若者に語る連載企画においては、ノロ祭祀がユタの活動とあわせて非合理的な陋習と位置づけれていた。このように、昭和30年代の時点で、すでにノロ祭祀の多くは断絶して久しい、歴史的な「過去」もしくは「遺物」として扱われていることが読み取れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要欄に記載した通り、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、2020年度に研究方法の大幅な変更を余儀なくされた。地元の新聞記事から現地社会の認識を捉える方法自体には手ごたえを感じている。しかしながら、マイクロフィルム化された過去の新聞記事をザッピングしていく作業が、実際に作業をしてみると当初予定していた以上に時間がかかることがわかった。また、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら現地調査を試みたりもしたのだが、所属機関において感染者が出るなどの状況で、そちらも結局は実施できなかった経緯があり、当初の計画よりも「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度となる。本来であれば、現地調で得られた複数地域のデータを比較したり、調査資料の取りまとめに時間を割きたいところであるが、「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」で述べた通り、まだまだ十分なデータが収集できているとは言えない状況である。そのため、ノロ祭祀の継承に関する包括的な結論を出すことは断念し、最終年度ではあるが可能な限りデータ収集に時間をあてることとしたい。 現在行っている地元新聞紙の記事収集については、研究手法としての手ごたえを感じている。そのため、過去から現在へと歴史の流れを追う形で可能な限り記事を収集して、年度末に収集できた資料のなかから、次の研究へとつながる暫定的な結論を引き出すこととしたい。 また、コロナの感染拡大の状況に応じてになるが、引き続き現地調査の機会が得られるように状況を注視していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により現地調査を実施できず、また、学会等もオンラインになったため、旅費による支出がなくなり、次年度使用額が生じた。 次年度は、ワクチン接種も進み、次第に現地調査も可能になると見込まれる。そのため、現地調査の期間を長めに確保するなどして、これまで実施できなかった分の現地調査費用に次年度使用額をあてようと考えている。
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Research Products
(2 results)