2022 Fiscal Year Annual Research Report
奄美大島南部におけるノロ祭祀継承の現代的展開ー神社との相互交渉に注目してー
Project/Area Number |
19K12964
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
町 泰樹 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (30725693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ノロ / ユタ / 神社 / 奄美 / 民俗知 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、これまで未調査であった大和村と宇検村の神社や小祠の巡検調査を行なった。大和村では、サトウキビの苗や黒糖製造技術を日本に伝えたとされる直川智(すなおかわち)翁を祀る開饒(ひらとみ)神社があり、郷土史類にも資料が比較的まとまっている。本研究期間中にはまとめきれなかったが、研究期間終了後に、偉人崇拝からの神社創建の事例として検討していきたい。 また、奄美大島北部にて神社を管理している男性にインタビューを行い、神社の管理を担うようになった経緯について聞き取り調査を行なった。男性によると、神社の管理を担うようになったのは、男性の遠縁にあたる前任者から、高齢を理由に引き継ぐよう依頼されたためであった。その際、前任者が男性を適任としたのには、理由があり、男性の母親はユタであり、父方祖母がノロであったため、神社の管理という神ごとを担うのに適していると判断されたそうである。ノロやユタはほとんどが断絶している状況にあるが、ノロやユタをめぐる民俗知は集落内で共有されており、それが神社の管理者を決める際に活用されている事例と位置付けられる。ところで、男性は神社を管理するようになってから、前任者があげていないかった祝詞をあげ、これまで祭礼時に用いられていた線香を廃止している。線香に関しては、神仏分離以前の神仏混淆の名残と考えられるが、こうした要素が管理者の「熱心さ」によって「神道化」している様子がうかがえた。同時に、こうした神道化の背景に、地域内で共有されてきたであろう民俗知の弱体化も感じられた。こうした地域内での民俗知の競合については、今後も研究を深めるべきテーマであると考えている。 研究期間中がコロナ禍であったこともあり、なかなか神社等を管理している人々から聞き取り調査ができなかったが、最後に今後の研究につながる事例にたどり着くことができた。
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Research Products
(1 results)