2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12966
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
藤岡 俊博 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (90704867)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | レヴィナス / 利益 / 没利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「利益」および「没利益」と関連する哲学的主題の研究、および、「利益」概念の思想史におけるエマニュエル・レヴィナスの哲学の位置づけについての研究を実施した。前者に関しては、2019年9月14日に同志社大学で開催された第2回レヴィナス協会大会でのシンポジウム「レヴィナスとローゼンツヴァイク 歴史と物語をめぐって」に登壇し、「理性の狡智と利益の狡智 ヘーゲル・ローゼンツヴァイク・レヴィナス」と題する研究発表をおこなった。同発表は、ローゼンツヴァイクやマイネッケのヘーゲル論を補助線とし、ヘーゲルの歴史哲学や経済思想の受容を分析することで、ヘーゲルの思想のなかから「利益の狡智」と呼びうる議論を抽出したものである。後者に関しては、2019年12月1日に京都大学で開催された国際シンポジウム「個と普遍 エマニュエル・レヴィナスと極東の思考」にて、"De l'amour-propre a l'interet - Levinas et le jansenisme"(「利己愛から利益へ レヴィナスとジャンセニスム」)と題する研究発表をおこなった。同発表では、「利己愛」や「利益」をめぐる17-18世紀のモラリストの言説の分析にもとづき、パスカル的な「自我」の概念とレヴィナスの「没利益」(脱利益内存在)の思想との近接関係を明らかにした。また、レヴィナス研究一般に関する成果として、レヴィナスの未刊草稿の哲学的意義に関する論文「レヴィナス青年期のロシア語著作について」を『レヴィナス研究』誌に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果を、1件の雑誌論文と2件の口頭発表の形で公表することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き研究を実施し、順調に成果を公表できるように努める。なお、「利益」および「没利益」をめぐる哲学的主題については、これまで扱っていない哲学者をも研究対象に含めることで、より広い研究成果が得られるように努力したい。
|
Causes of Carryover |
パソコンなどの備品について現有のものを使用できたほか、2020年2月および3月の出張が新型コロナウィルスの影響で中止になり、旅費の支出がなかったため。2020年度、フランスでの資料収集等が可能かどうかは現段階では不明だが、未使用分については思想史関連図書の購入費にあてる予定である。
|