2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K12966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤岡 俊博 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90704867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レヴィナス / 利益 / 没利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、西洋思想史における「利益」および「没利益」の概念と主題の展開を、おもにフランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスの思想と、フランスの民族学者マルセル・モースの「贈与論」に焦点を合わせて明らかにすることである。第三年目にあたる本年度は、特に、(1)レヴィナスにおける「利益」および「没利益」に関する研究、(2)最新のレヴィナス研究の分析、(3)モースの民族学から派生する研究の紹介および分析の3点に関係する研究成果を公表した。(1)レヴィナスは晩年の講演「社会性と貨幣」(1986年)のなかで、「利益内存在」と「脱利益内存在」という概念を提示し、両概念に立脚する二つの「価値論」を区別している。本研究は、利益の概念の思想史、なかでもそこで特に重要な位置を占めているジャンセニスムとレヴィナスの思想の関係に着目することで、レヴィナスがこれらの概念を用いて試みたと考えられる利益概念の存在論の様態を考察した。その過程で、これまでほとんど主題的に研究されてこなかったレヴィナスとパスカルの思想の密接な関連が、特に「自我」の概念をめぐって明らかにされた。(2)レヴィナス思想をめぐる最近の研究動向について、合評会でのコメントや書評紙での対談を通して紹介および分析をおこなった。(3)マルセル・モースの「贈与論」に依拠しながらパリのメトロを民族学的に分析したマルク・オジェの『メトロの民族学者』を翻訳し、オジェの経歴および同書の意義について訳者によるあとがきの形で解説をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果を1件の学術論文として公表できており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究期間の最終年度にあたるため、本研究課題の総括的な成果公表を目指したい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症の拡大の影響により、国内外での研究旅費の支出がなかったため。
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