2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K12970
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
高橋 恭寛 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (70708031)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 江戸儒学 / 近世教育思想史 / 儒学思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、書簡集や詩文集の収集につとめ、和文書簡の収録内容の重複や偏りなどを比較検討した。収集した和文書簡集は全て写本であり、その来歴は不明なものが多い。ただ、その収録内容について見ていくと収録書簡の配列がほぼ重なるものが多く、大きくわけて二つの書簡集に基づいて分類出来る。 一方は、藤樹書簡集のうち『藤樹書翰』及び『中江先生教化状』と書簡の配列が重なり、もう一方は、こちらも藤樹書簡集のひとつである『和翰』に重なる。これらの書簡集は、『藤樹先生全集』第2冊「代表的原本内容一覧表」において確認することが出来る。『全集』第2冊「代表的原本内容一覧表」に掲載された和文書簡集であり、現行の『藤樹先生全集』(以下『全集』)において校勘に用いられたものである。これら書簡集の来歴については、『全集』第2冊「解題」で確認が出来るように、藤樹学派内部で流布した書簡集であった。すなわち、現在確認出来る多くの和文書簡集は、学派内部で出回っていたものが写され、共有されたものが多いと考えられる。これらは、昨年度取り上げた刊行された藤樹書簡集の『儒生雑記』などと配列が異なっており、刊本から写したとは考えにくい。そのため、藤樹学派と繋がりのあるところから書き写されたのであろうと考えられる。藤樹書翰は、自らの手で編集したものはほとんど無い。藤樹の学問がどのように学ばれたのか、その一端を窺い知ることが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度末以来、新型コロナウィルス対応のための学内業務や授業対応などで時間が取られてしまった。また、他県への調査や研究報告の場も制限され、研究活動を十分に進めることが出来なかった。ただ、デジタル複写や郵送などで対応してくださるところを中心に資料収集と分析を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
状況が落ち着いてゆくなかで、他県に直接出向いて調査せねばならない書簡集の入手を試みるとともに、最終年度のため、これまで集めた資料を分析し、研究報告なども試みる。 また、書簡集のみならず、藤樹に仮託した文献『為人鈔』や『止善録』などの内容分析をおこない、全体として、中江藤樹がどのような思想を説く人物として理解されていたのか、その傾向についても考察を試みる。
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Causes of Carryover |
年度末に申請した他県資料の文献複写代金が年度内での支払いが出来なかったため。
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