2019 Fiscal Year Research-status Report
イギリスのプラトン主義の系譜―バークリとケンブリッジ・プラトニストの比較研究
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19K12972
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
竹中 真也 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (50816907)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バークリ / 『サイリス』 / 「一」 / カドワース / 理性 / プラトン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、『サイリス』の抄訳を公表する予定であったが、それを進めるうちに、論文を書くことができた。そこで、論文を優先的に公表することにした。これまでの先行研究においても、バークリの最晩年の著作『サイリス』で展開された形而上学は、プラトン主義的な傾向を有することが明らかにされてきたが、そのことを具体的にテキストに基づいて解明されていなかった。そこで、「一」という概念に焦点を当てて解明した。こうした試みは我が国にはこれまでなかったように思われるし、海外でもほぼないように思われる。この「一」は、「一者(ト・ヘン)」を思い起こさせるものであり、バークリが両者の繋がりについて言及していることを示した。このことは、バークリがその前期の著作においても、すでに『サイリス』に通底する形而上学を有していた、という成果も含むのであり、バークリ哲学の一貫性についても言及した。また、カドワースについて、イングランド啓蒙研究会、日本イギリス哲学会のセッションにて発表することが決まっている。 なお、この成果は、新プラトン主義協会にて口頭発表し、意見を求めた。また、その成果を中央大学文学部『紀要』にて公表した。今後は、『サイリス』の抄訳をいっそう進めるとともに、カドワースの著作や論文の研究を進め、それを日本イギリス哲学会のセッションにて発表する。カドワースに関する、おおよそ資料はそろったので、これらについても今後、抄訳と共に、研究論文を投稿し、イギリス哲学における、プラトニズムという観点を、ひとつの流れとして示していく。こうして、我が国における哲学史研究の欠落を補うことを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、論文を一本と、発表を3回(うち2回はコロナ禍により、2020年6月と7月に延期)行うことができるので、おおむね順調に進展していると評価した。論文は『紀要 哲学』、発表は、新プラトン主義協会、イングランド啓蒙研究会、また日本イギリス哲学会である。抄訳を研究ノートとして公表する予定であったものは、下訳ができている。また、あらたな論文のテーマとして、『サイリス』のルネサンスからの遺産も見えてきている。次年度は、これを紀要等に公表する予定である。また『サイリス』のプラトン主義について学会や研究会にて発表するとともに、論文を公表する足掛かりができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
『サイリス』の抄訳、または、カドワースの著作ないし論文の抄訳、またこれらの著作から得られた知見を論文の形にして公表する予定である。とりわけ「生得思念」に関する問題に焦点を当てて、理性、知性の役割を解明することは受容であろうと考える。またルネサンス期のプラトニズムの研究が、イギリスのプラトニズムに影響を及ぼしているので、それについても研究を進める。また、状況が許せば、海外にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本来、今年度、予定していた国際学会の発表、海外の滞在研究がコロナ禍により、延期したことが大きい。また出張の機会が大幅に制限されたこともある。
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