2023 Fiscal Year Annual Research Report
テクノロジー的全体主義の分析:アーレントとヨナスの思想比較を通じて
Project/Area Number |
19K12974
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
百木 漠 関西大学, 法学部, 准教授 (10793581)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハンナ・アーレント / ハンナ・ヨナス / テクノロジー / デジタル全体主義 / ポスト真実 |
Outline of Annual Research Achievements |
「ポスト真実の政治」をめぐる研究成果を、韓国の慶熙大学校で開催されたThe 2023 ICCTP Conference(2023年6月9-11日)にて英語報告した。報告内容は、単著『嘘と政治:ハンナ・アーレントの思想とポスト真実』(2021年)の内容をまとめ発展させたもので、昨今の「ポスト真実の政治」をめぐる問題をアーレントの「政治における嘘」論を参照して分析したうえで、ホックシールドの『壁の向こうの住人たち』(2016年)を手がかりに、この苦境を乗り越える方途を考察した。参加者から積極的な質疑を受け、大いに参考になった。そのフィードバックを反映させた英語論文も2024年度中の完成に向けて執筆中である。 また『立命館産業社会論集』第59号(2023年6月発刊)に寄稿した「アーレントの活動論再考」では、アーレントの活動論に関する近年の研究動向をまとめつつ、アーレントが現代の科学者の試みを「自然の中への活動」と表現したことの意味を考察した。アーレントの「活動」には「他者との関わり」と「始まりをもたらすこと」という二つの軸があるが、現代の科学にみられるのは「他者との関わり」を欠いた「予測不能な始まりをもたらす」行為と解釈することが妥当であろうというのが本論考の結論である。 また『KANSAI UNIVERSITY REVIEW of LAW and POLITICS』第45号(2024年3月発刊)に寄稿した"Hannah Arendt’s Thoughts on Labor and Totalitarianism"では、『批判版全集』におけるアーレントのマルクス批判を手がかりに、アーレント自身は十分に展開しなかった「労働と全体主義」の親和性について考察すると同時に、その親和性が現代のポピュリズムの排外主義にも通ずる問題ではないかという見解を示した。
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Research Products
(4 results)