2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Development of Opera Performances in Russia: Interrelations between Moscow Private Opera Theatre and Theatres in Local Areas
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19K12979
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
神竹 喜重子 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (70786087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア / オペラ / 私立歌劇場 / 地方 / 古儀式派 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もロシアへの渡航が叶わず、これまでに収集してきた資料の中でイッポリート・プリャーニシニコフ私立歌劇団と私立マーモントフ歌劇場の関係性についてデータの整理と分析を行った。プリャーニシニコフは1880年代後半以降、トビリシやキーウ(当時はロシア帝国領内)の市立歌劇場にて歌手、演出家として活躍し、ロシアで初めて本格的な私立歌劇団を立ち上げたことで知られる。ボロディンの《イーゴリ公》のモスクワ上演などで一大センセーションを巻き起こし、特に「ロシア5人組」の再評価を促した。本年では、このプリャーニシニコフ私立歌劇団からロシア古儀式派の資本家マーモントフが創設し経営、指導していた私立歌劇場に、ツヴェトコーワを始めとする優れた歌手たちが多く移籍したこと、またその移動によって両歌劇団間に上演するオペラ演目に連動性が見られることを確認した。 さらに私立マーモントフ歌劇場においては、これまでの先行研究ではアンブロワーズ・トマの《ミニョン》やレオ・ドリーブの《ラクメ》の上演が集客上芳しくなかったとされてきたが、アメリカ人歌手のマリー・ヴァン・ザント(1858-1919)がゲスト出演した際にチケットの収益及び集客ともに倍増していたことが判明した。バレエ界のイサドラ・ダンカンと同じく、彼女もまた外国人歌手としてロシアのオペラ文化界にフランス・オペラの潮流をもたらしたことがわかる。 以上の成果については、現在論文に取りまとめ発表する準備を進めている。また令和6年3月4日には、私立マーモトフ歌劇場について寄稿した論文集『ロシア正教古儀式派と国家:権力への対抗と共生』が明石書店より刊行された。
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