2020 Fiscal Year Research-status Report
イタリアにおける「宮廷ユダヤ人芸術家」のオペラ文化への貢献
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19K12984
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
萩原 里香 東京藝術大学, 音楽学部, 助手 (70783398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユダヤ人 / 舞台芸術 / 北イタリア / ルネサンス / バロック / 踊りのマエストロ / マントヴァ / フェッラーラ |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目も国内のみでの研究活動となった。前年に続きユダヤ人芸術家が活動した都市と実態を探るにあたり、すでに考察した16~17世紀のマントヴァでの例(当時、宮廷の踊りのマエストロが代々ユダヤ人であった)を参考に、「踊り手」を軸にケーススタディの積み重ねを試みている。ユダヤ人の踊り手といえば、ペーザロ出身とされる15世紀のグリエルモ・エブレーオ(ジョヴァンニ・アンブロージオ)がよく知られている。師であったドメーニコ・ダ・ピアチェンツァ、やはりその弟子であったアントーニオ・コルナッツァーノと同様に指南書を残した点でも重要な人物である。彼らこそ欧州でいち早く誕生した宮廷に仕える踊りのマエストロであり、その一人であるグリエルモはユダヤ人芸術家の先駆け的存在と言える。よって彼らのようなマエストロの活動地のひとつであり、マントヴァやヴェネツィアと同様に欧州でも最重要ユダヤ人地域であったフェッラーラに焦点を当て、調査に注力している。この都市は、迫害から逃れてきたユダヤ人らを寛容な姿勢で保護していた点で、マントヴァと同様である。 また、同時代にイギリスで活動した踊りの専門家に関する研究会に参加する機会があり、この観点からも何かしらの発見が得られないか、調査中である。 環境に左右された年であったが、オンラインでの研究会やセミナーが一般化したことで、本研究テーマに大きくかかわる当代の作曲家モンテヴェルディについてシリーズで講義する機会を得、彼とユダヤ人芸術家とのかかわりについての考察を本研究成果として発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度同様、欧州への渡航が叶わなかったことが大きく影響している。資料収集に関しては前年度の遅れを取り戻すこともできず、さまざまなやり取りがオンラインになったことによる環境の変化により、十分な研究調査時間を確保できなかったことが理由としてあげられる。海外調査ができない分、先行研究の比較的多い時代にも視野を広げることで資料不足補うことにした。よって予定とは少し異なる角度からのアプローチを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目も引き続き、北イタリアの都市におけるユダヤ人コミュニティの芸術活動調査を継続し、現在調査中のフェッラーラでのケースをさらに掘り下げていく。宮廷への出入りはもちろんだが、コミュニティ内での芸術教育(主に音楽や舞踊)の状況から、ユダヤ人の芸術家育成の実態を明らかにしたい。その後はヴェネツィアのケースの調査に入りたい。
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Causes of Carryover |
予定していたイタリアでの現地調査が、新型コロナウイルスの流行により2年連続して自粛せざるを得なくなり、その分の予算消化が行えなかったため、未使用額が大きく生じている。状況が改善次第、現地調査にかける時間を捻出し、遅れている進捗を取り戻したい。
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Research Products
(2 results)