2021 Fiscal Year Research-status Report
イタリアにおける「宮廷ユダヤ人芸術家」のオペラ文化への貢献
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19K12984
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
萩原 里香 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (70783398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フェッラーラ / 舞台芸術 / ユダヤ人 / 踊りのマエストロ / 北イタリア / ルネサンス |
Outline of Annual Research Achievements |
ルネサンス時代には、北イタリアの宮廷に踊りの専門家として仕えた多くのユダヤ人がいたことが確認できる。もっともよく知られるのは、ペーザロ出身のグリエルモ・エブレーオ(改宗後にジョヴァンニ・アンブロージオと名乗る)であるが、彼が仕えた都市のひとつであるフェッラーラに着目した。ここは、彼の他にも同時期に活動していた踊りの専門家がおり、欧州でもいち早く「踊りのマエストロ」が誕生した都市と言える。彼らのような存在は、華やかな舞台芸術の発展には欠かせず、よって踊りの専門家を重用したフェッラーラでの舞台実践は、他のどの都市の実践よりも総合舞台芸術が生み出されていく大きな契機になっていると考え、詩芸術や音楽芸術などの踊り以外の面からもその重要性を実証し、論文としてまとめた。
音楽や台本や舞台美術など、舞台芸術にはあらゆる側面があるが、ユダヤ人が最も貢献していた分野はやはり「踊り」であると言える。バロック時代に入るとサラモーネ・ロッシのような作曲家や演奏家も確認できるが、ルネサンス期にいたっては「踊り」を担う立場のものが圧倒的に多いことは明らかである。それは金融業などと同様に、踊りがキリスト教徒ではなくユダヤ人が行う職業とされていたからと想定できる。例えばヴェネツィアにはいち早く踊りと歌の学校のようなものがあったことは、それをより強める事実である。芸術家を育てるコニュニティ内の環境について今後さぐっていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も調査旅行が叶わず、進捗は予定通りとは言い難い。昨年度同様、方向性をひろげ、舞台作品の中で描かれるユダヤ人がどのように表現されているかという点からも研究をすすめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
北イタリアの都市に存在したユダヤ人コミュニティにおける芸術教育(主に音楽や踊り)の状況から、ユダヤ人の芸術家育成の実態を明らかにしたい。対象都市を限定せず、ヴェネツィアやフィレンツェなど、ユダヤ人の踊りの学校があったとされる都市を中心に調査をすすめる。
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Causes of Carryover |
予定していたイタリアでの現地調査が、新型コロナウイルスの流行により3年連続して自粛せざるを得なくなり、その分の予算消化が行えなかったため、未使用額が大きく生じた。
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Research Products
(3 results)