2020 Fiscal Year Research-status Report
The Philosophy of Depiction Meets Picture Using Practices in Popular Culture
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19K12985
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松永 伸司 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (60778520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 描写の哲学 / 言語行為論 / バーチャルリアリティ / VR / 分析美学 / 画像表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
雑誌『フィルカル』の5巻1号および5巻2号に、前年度に開催された「2019年度描写の哲学研究会」の成果が文章化されて発表された。内容はそれぞれ、①同研究会のレポート記事、②描写の哲学の基礎的なサーベイ、③同研究会の発表をそれぞれ改稿した論文3本、である。③の各論文は、いずれも現代文化における画像の使われ方に焦点をあわせたものである。これらの成果物によって描写の哲学という分野のプレゼンスを示すとともに、とくに「画像を使用する」という、描写の哲学や関連分野において従来はあまり扱われていなかった観点(語用論や言語行為論との接点)からの研究の意義と可能性を示せたと思われる。 また、VRやARに関する国内カンファレンスである「XR Kaigi 2020」で、VRデバイスを使った表象の独特さについての発表を行った。この発表の後半部分では、部分的に描写の哲学の知見を援用して、写真やその他の画像による表象(画像表象=描写)とVRデバイスによる表象の比較(とくにその違いの検討)を試みた。それによって、VRに独特の表象のあり方について、おそらく工学的な研究にはない哲学ならでは切り口による説明が提示できたと思われる。 いずれの成果も、描写の哲学の応用可能性を示すだけでなく、現代のポピュラー文化において画像がどのように使われているかを分析するものにもなっている。それゆえ、哲学的な研究としての意義に加えて、現代文化についての研究としての意義も持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「2019年度描写の哲学研究会」の成果自体は予想以上のものだったと言えるものの、新型コロナの影響もあり、2020年度には第2回の研究会を開催できなかった。また当初予定していたかたちでの学会における研究成果の発表もできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大まかに以下の2つの方向で研究および成果公開を進めたい。 ①描写の哲学と他分野(たとえば認知心理学や言語哲学)の接点を探る。この方向については研究会の開催を予定している。 ②本研究課題の中でこれまでに扱っていない現代文化(たとえばソフトウェアによる顔写真の加工の文化)について、描写の哲学がどれほど(またどのような点で)適用できるのかについて検討する。
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Causes of Carryover |
端数の余り。次年度に物品費として使用する。
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