2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K12987
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宍倉 正也 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 研究員 (90781766)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | からゆきさん / 戦前日本人移民 / 日本の植民地主義 / 海外に伝わる日本の歌 / 記憶の政治学 / 大正琴 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年初頭から始まったコロナウイルスの影響で、研究が大幅に遅れている。2020年1月には熊本大学での「からゆきさん」に関する講演を行い、そこでの研究者との交流を通してジンバブエの伝統音楽に使われている大正琴は、どうやら「からゆきさん」がもたらしたものだというものがわかった。そのため、当時、2021年1、2月ににジンバブエでの現地調査を予定していたが、コロナの影響で不可能となった。その後、2月、3月を通して韓国釜山、クチン(マレーシア)、またシンガポールでの調査を行い、非常に有意義な情報を入手できた。特に韓国釜山近郊の馬山という場所は港町で、当時、多くの「からゆきさん」が移住していたらしい。そしてシンガポールでは、1920年代より現地の娼館が政府の方針で廃止されることとなった後、多くの「からゆきさん」がどうやらオーストラリアへ移住していたらしいという情報も得ることができた。また、シンガポールは「からゆきさん」に関する資料が多く残されており、再訪の必要性を感じていた。これらの研究成果の結果、2020年夏には韓国馬山、シンガポール、そしてオーストラリアのケアンズ、木曜島、ブルーム、シドニー等での現地調査を予定していたが、やはりコロナの影響で中止せざるを得なくなった。その他にも、2020年7月に予定されていた国際伝統音楽評議会のミャンマーでの学会で「からゆきさん」に関する発表を行う予定であった。また、その後ヤンゴンにて現地調査を行う予定もあったが、学会自体がキャンセルされ全ての予定が中止となった。もちろん、手元にある資料の読み込みや、ネットを通した調査等は継続しているが、この研究は現地調査を主要な研究手法としているため、残念ながら2020年度は主だった研究実績は残せていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年初頭から始まったコロナの影響で、この研究は大幅に遅れている。2020年3月までは、天草島原地方、韓国釜山、クチン(マレーシア)、シンガポール等で現地調査を行い、研究は順調に進捗していた。だが、予備調査を行うつもりでクアラルンプールへ行ったところでロックダウンに遭遇してしまい、現地から動けなくなってしまった。マレーシアでは現地の研究員と共同調査や、招待講演なども予定していたが、ほとんどキャンセルとなってしまった。クアラルンプールでの主な調査としては、当時「からゆきさん」が滞在していたと思われる中華街を訪れたくらいで、主だった成果は残せていない。上にも書いたが、2020年夏には韓国馬山、シンガポール、そしてオーストラリアのケアンズ、木曜島、ブルーム、シドニー等での現地調査を予定していた。しかし、これらの予定は全てキャンセルせざるを得なくなった。また2021年1、2月にはジンバブエでの現地調査を予定していた。このジンバブエでの現地調査は、大正琴という楽器を通して「からゆきさん」の足跡を辿るという、この研究の今後を大きく変える可能性があるものだったが、残念ながら現在でもジンバブエでの現地調査の予定は全く立たない。この研究は現地調査を主な研究手法としている以上、海外渡航制限がある限り研究を進めていくことは非常に困難である。1日でも早くコロナの状況が改善し、研究を進捗させられる日が来ることを願っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策だが、まず、コロナによる世界的な海外渡航制限が緩和される必要がある。2021年度はある程度、海外渡航制限が緩和されオーストラリアなどへは渡航できるかと期待していたが、現状では2021年度もこの研究の進捗も難しい模様だ。上にも書いたが、この研究は現地調査を主な研究手法としているため、海外渡航制限がある限り研究の進捗は難しい。特に今後は、東南アジア、オーストラリア、そしてジンバブエでの現地調査は必須と思われる。これらの地域への渡航が1日も早く可能になるよう願っている。 以上のような現状から、おそらく2020年度に続き、本年度も研究の大幅な進捗は望めない。世界的にはコロナワクチンの普及が進んでおり、2022年度からは海外渡航も容易になると期待している。2020、2021年度は残念だったが、海外渡航制限が緩和されれば、この研究の大幅な進捗が期待できる。
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Causes of Carryover |
2020年度は多くの海外現地調査を予定していたが、コロナの影響で全てキャンセルになったため、当該年度の使用額は0円となっている。未使用分については、予定通り海外現地調査費とし、今年度、来年度以降に使用する予定である。
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