2021 Fiscal Year Research-status Report
「空なる場所」としての共存空間 ― 日欧現代演劇における「声」の演出美学
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19K12994
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| Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
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Principal Investigator |
針貝 真理子 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (00793241)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 声 / 民主主義 / 他者 / 自由 / 演劇 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる2021年度は、昨年に引き続き、予定していた海外出張が実現できなかったため、民主主義に関する文献を幅広く精読し、またそれと並行して「声」論の先行研究を整理して、論文「「現代演劇と〈声〉の文化 ー 言語と身体、在と不在のあいだ」を執筆し、論集『モノと媒体の文化学』として刊行に至った。本稿では、民主主義において未だ「票」として数えられない「声」を認識させる「声」のあり方を、ロバート・ウィルソン演出『ハムレットマシーン』の上演分析から導き出した。
また、講演「『私は声である』― ドイツ演劇学から見る〈声〉の人間像」では、「声」にあらわれる異質な他者像について論じた。民主主義の基盤である「声を聴く」という行為は、他者を認識する行為に他ならないが、ここではとりわけ異質な他者の声を聴くという行為にフォーカスした。この行為は、戦争やパンデミックと隣り合わせの不安定な時代において、より一層重要性を増していると言える。
さらに、芸術実践と接続する形で、東京藝術大学におけるゲーテ作、ベートーヴェン作曲の『エグモント』の上演に対する助言を行うとともに、本作の重要なテーマである「自由」についての考察を、書籍『つながれ！ベートーヴェン』に掲載した。フランス革命とほぼ同時代に書かれた本作において、「自由」は民主主義の根幹を成す重要な要素である一方で、いわゆる「新自由主義」の弊害が指摘される現代の視点から読み直すと、ここには「自由」という概念の抱える問題もまた垣間見えていることがわかった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、コロナウイルス流行の影響で、予定していた海外渡航や国内出張が実現できなかった上に、オンライン授業の負担が大きかった。さらに今年度は、本務校の業務に夏季休暇を費やさざるを得ず、それに加えて大学の異動に伴う諸業務で春休みが潰れたため、研究時間の確保が著しく困難であった。
それにもかかわらず、2021年度は、民主主義と声の関係についての土台となる学術論文を発表することができ、また次年度に向けた学会発表準備や論文投稿準備も着実に進んでいるものの、「空なる場所」という、本研究テーマの核心的キーワードを扱った研究成果の発表には至らなかったため、総合的に「やや遅れている」とした。
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| Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度までに進めた研究の成果を、学会発表または学術論文の形で発表する。具体的には、①2022年6月のドイツ学会で、マルターラー演出の代議制民主主義のパロディである喜劇『ゼロ時あるいは奉仕の技術』を例に、笑いや歌声に表れる感性的魅力が持ちうる政治的機能について再考し、これを学術論文のかたちでも発表する。②ルネ・ポレシュのコロス劇を例に、「空なる場所」を体現する舞台空間について論じる学術論文を投稿する。
また、できれば夏から秋にかけてドイツ・スイス出張を行い、ドイツではベルリンでポレシュについての資料を、スイスではチューリヒでマルターラーについての資料を集めるとともに、両者の新作およびヨーロッパ演劇シーンについての知見をアップデートする。
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| Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた海外出張および国内出張が実施できなかったことに加えて、学会や研究会がオンライン開催となったため、出張旅費として計上していた予算の繰越が発生した。次年度使用額は、2022年度に感染状況が改善した場合の旅費および資料購入費、また増加したオンライン学会・研究会に対応するための機材購入費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)
