2020 Fiscal Year Research-status Report
パリ・オペラ座におけるバレエ伴奏者の職業化と楽器の変遷(1807-1939)
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19K12995
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
阪田 玉藻 (永井玉藻) 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (80836940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バレエ / 伴奏者 / フランス / パリ・オペラ座 / 19世紀 / 演奏者 / 社会的地位 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実施にあたっては、新型コロナウィルスの未曾有の流行により、研究採択時には予想もできなかった多大な困難が生じた。本研究は、基本的にフランス国立文書館、およびフランス国立図書館所蔵の資料を直接参照する必要がある。そのため、フランスへの入国制限がある現在の状況は、研究の遂行において不可抗力の著しい遅れを生じさせており、厳しい状況であると言わざるを得ない。仮に一般人のフランス・日本両国間の往来が、一切の制限なしで出来るようになったとしても、資料館の利用に制限がかかっている場合には、資料調査を行う上で大変な困難が生じることが予想される。 しかし、その困難な状況においても、今年度は本研究計画の実施において、一定の成果を出すことが出来た。まず、2020年11月にオンラインで開催された日本音楽学会第71回全国大会においては、「バレエの稽古伴奏における楽器の変遷--19世紀後半のパリ・オペラ座の場合--」(セッションC-2)の研究発表を行うことが出来た。この発表において、従来の研究において無批判に引用されてきた、バレエ史研究者のアイヴァ・ゲストによる記述への再考を促し、バレエ上演の歴史的実態に関する考察に新たな視点を加えることが出来たのは、本研究の実施における大きな成果の一つと言える。また、研究成果を社会・国民に還元するという、科研費の目的に即する成果として、ウェブ媒体での連載執筆(2021年5月より連載開始)、および単著の出版も決定し、現在、執筆を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の交付申請時に、2021年度での実施を予定していた、日本音楽学会全国大会での研究発表を、当初予定より1年度前に実行できたため、研究は順調に進展していると言える。また、2019年度に調査した大量の資料を整理することにより、これまで明らかになってこなかった様々な情報を得られているのも、良い状況だと考えられる。資料の整理・分析は現在も引き続き行っているため、この作業は2021年度も早急に進めていきたい。 しかしながら、新型コロナウィルスの影響によって、フランスへの渡航が不可能である状況が、本研究の遂行を大いに妨げていることは事実である。資料の電子複写を資料館に依頼しようにも、フランス国立図書館およびフランス国立文書館は、繰り返し行われているフランスでの外出禁止措置の影響を大きく受けており、資料館で業務を行うスタッフの数が、通常よりも著しく少なくなってる。このような状況では、資料の複写を依頼しても、その資料が手元に届くまでに多大な時間がかかる。現に、2020年7月にフランス国立図書館に複写を依頼した資料は、2020年10月に再度送付を催促するまで、送られてこなかった。 したがって、手元にある資料を用いた作業は著しく進展する一方で、現地での資料調査が一切出来ない状況にあり、その点で、本年度の自己評価区分は(2)おおむね順調に進展している、とするべきであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年2月までに収集した資料の整理、およびデータ分析を最優先し、バレエ伴奏者のデータベースへの情報入力を進める。また、伴奏者用譜面のデータについても、内容の整理を行い、随時データ入力を進めていく。フランス国立図書館、およびフランス国立公文書館にオンライン複写の申請が可能なものは、予算の範囲で可能な限り複写を申請し、現地資料館のスタッフに協力を仰ぎたい。 また、資料整理およびデータ分析の過程で判明した新たな事実については、所属大学などの紀要論文などの形で随時発表を行う。2020年11月に行われた日本音楽学会全国大会での研究発表と、関連する内容については、日本音楽学会機関紙の『音楽学』にすでに投稿済みであるため、査読の結果を待ち、論文アクセプトにむけて修正などを行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に当初予定していたフランスへの渡航が不可能になり、また緊急事態宣言の発出による国内移動の制限などもあったため、旅費などとして予定していた金額の分が、2021年度使用額として繰り越されて生じた。これらの予算については、フランスへの渡航が可能になれば資料調査の費用などとして使用することを予定している。また、当初より2021年度分の予算として助成が許可された分の金額については、当初予定の通り、資料収集や論文執筆などのための経費として使用する予定である。
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