2019 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ・ゴシックにおける王権表象の変遷――建築・彫刻・版画
Project/Area Number |
19K12996
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
岩谷 秋美 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助教 (10735541)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ゴシック / 大聖堂 / ハプスブルク / 彫刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来は欠点とされたドイツ・ゴシックの多様性を評価すべく、多様性をもたらした原動力として想定される君主権の表象に着目し、これをドイツ・ゴシックの本質として捉えなおすことを目的とするものである。とりわけ、ゴシック大聖堂をはじめ、彫刻や絵画を含む芸術ジャンル間の影響関係に光を当てた考察を進める。初年度となる2019年度は、13世紀から16世紀初頭までのオーストリア・ゴシックに主眼をおき、バーベンベルク家の、そして何よりもハプスブルク家のゴシック芸術との関わりについて考察した。第一に、ウィーンでゴシック建築と付属彫刻の調査を行った。第二に、ウィーンおよびベルリンで設計図・版画・写本などの調査を行った。第三に、オーストリア国立図書館で開催中だった特別展「マクシミリアン一世:偉大なるハプスブルク人」を通じ、皇帝と印刷物(書籍・版画など)との関係について検討する機会を得た。 以上の調査研究に基づき、オーストリアの君主によるゴシック芸術の利用に関する仮説を構築した。この仮説は、次年度の調査研究を通して検証する予定である。またゴシック彫刻に関する調査成果を、令和二年度刊行予定の論文に取り入れた。一方、ゴシック建築に関する研究成果を三月初旬に口頭発表する予定だったが、新型コロナウイルス感染症流行のため実施できなかった。あわせて、当初は三月下旬に予定していたフランス・ゴシックの調査も延期となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、欧州での作品調査と、その調査成果に基づく考察が主要な課題であった。夏に実施したドイツ・オーストリアでの調査については、上述のとおり、概ね計画通り進めることができ、また必要な文献や資料の蒐集も順調であった。こうした成果の一部を論文としてまとめることができた。 一方で、三月に予定していた海外調査は、新型コロナウイルス感染症流行のため計画中止を余儀なくされた。そのため、進捗状況を「やや遅れている」とした。これについては、次年度の調査期間を延長させることで補う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度の成果、すなわちハプスブルク家が関わったゴシック芸術に関する研究を踏まえて構築した仮説の検証に努める。そのため、研究対象をオーストリア国外に広げ、ゴシックの作例を可能な限り多く収集することを主要目標とする。収集した作例を分析する際には、本研究の着眼点であるところの媒体の差異、すなわち建築・彫刻・版画・写本などの特質の差異に着目することとする。目標達成のために海外調査を予定しているが、新型コロナウイルス感染症流行の状況を適宜踏まえながら、柔軟に対応してゆきたい。
|
Causes of Carryover |
三月に予定していた海外調査が、新型コロナウイルス感染症流行のため計画中止を余儀なくされたため。
|