2021 Fiscal Year Research-status Report
ルーチョ・フォンターナの新しいモノグラフィの為に:補完研究として
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19K13000
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
巖谷 睦月 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (40749199)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ルーチョ・フォンターナ / 20世紀イタリア美術 / 空間主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、昨年同様、感染症の蔓延によって海外渡航が制限される状況が続き、アルゼンチンおよびイタリアでの現地調査が実質的に不可能であった本年を、現状で進めることの可能な部分の原稿を準備する期間にあてた。具体的には、国内での調査が可能な分野の文献資料の収集・検討と、すでに収集してあった文献資料の検討・整理をするとともに、とりよせの可能な資料を収集した。 特に、空間主義の宣言文に関する資料収集・検討は、報告者が修士以来進めてきた研究の一環であり、これを未来派の宣言文と比較検討する作業を、改めて精度を上げておこなった。現在、未だ原語のイタリア語からの邦訳がない宣言文についても邦訳と解題を作成するべく作業中であり、この成果は2022年度内に論文として公表の予定である。 この前提として、20年度末に、立命館大学における研究発表会「イタリアにおけるモダンとアヴァンギャルドの相克Ⅰ 未来派の宣言文を読む」の場で、未来派の宣言文“Ricostruzione futurista dell’universo”の精読を踏まえ、空間主義の宣言文との比較検討をすべく、「〈未来派的世界再構築〉を読む--目に見えないものの知覚と空間主義への影響」と題した発表をおこなった。これを基に、2021年度中に「〈未来派的世界再構築〉を読む --空間主義の目-- 」と題した論文を発表したことで、空間主義の宣言についての考察をより一層深める成果に繋がった。 なお、この研究課題における最終目標であるフォンターナの日本語によるモノグラフィを最初に発表した瀧口修造とフォンターナの間の交流について、2021年度末に国内のアーカイヴでの詳細調査をおこなった。これを基に、2022年度内に、我が国で最初のフォンターナのモノグラフィが完成した経緯についてまとめた研究ノートを発表することを目標に、別途準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今般の感染症の蔓延を起因とする、諸外国および日本の検疫の対応や所属機関の通達による海外渡航の制限を受けたことで、実地調査が現実問題として不可能だったため、現地で実見して入手する以外に手立てのない資料を収集することが、一昨年および昨年度に続き本年度も不可能であった。このため、各年度に予定していた調査研究の内容のうち、重要な資料入手が実現しておらず、研究が滞っていることは否めない。 しかし、これまでに入手していた資料や、国内でも調査可能な資料等によってカバーが可能な部分については、その読み込みを深めるとともに、新たに国内調査をおこなうなどして、最終的な課題の目標となるモノグラフィの執筆準備を進めることはできた。難しい状況の中で、多少なりとも研究を前進させることはできているが、課題申請時に想定していた進捗状況を思うに、やはり順調とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年度および昨年度と同じく、現状の解決は、海外調査が可能になることによってのみ成し遂げうる。各年度に予定していたアルゼンチンでの調査、イタリアでの調査のいずれも現状では実現できていないが、これは報告者本人が何らかの対策を講じることで解決できるような問題ではない。所属機関の出張に対する対応、渡航先と本邦の政策および感染の状況に左右される問題である以上、一研究者としては、状況の改善を祈るのみである。 今年度についても、やはり、これまでと同様、可能な限り海外の資料を入手し、現状で参照できる文献を基にした執筆作業が必要と考えるが、特に資料のとりよせに関して、新たにウクライナ情勢の悪化による航空便の遅滞という想像もおよばなかった事態が起きているため、これまで以上の困難が起こりうる。イタリア及びアルゼンチンの関係機関において、平常時に現地での作業が求められる内容を、先方の人員が必要となるオンラインで依頼することは、決して容易ではない。 このため、海外調査なしに想定していた資料を入手することは相当に難しいと思われるので、それ以外の部分での研究を進めてゆくことで、最終的な目標に近づく努力をしてゆきたい。ただし、本年度の状況如何によっては、最終目標であるモノグラフィの完成については、延期せざるをえない可能性も少なからずあるので、最低限、その下準備となる研究を進めて、論文という形で発表してゆくことで、先に繋げてゆきたいと考える。 また、海外渡航に制限がなくなった際には、可能な限り迅速に、また充実した形で調査を実現できるよう、適切な準備を進めておくことに留意している。
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Causes of Carryover |
今般の感染症の蔓延に端を発する海外渡航の制限により予定していた調査ができない年度が続いたものの、2021年度は調査に向かえる状況が整うと予測し、そのための旅費をある程度確保しながら年度内の支出を最低限におさえて研究を続けたにもかかわらず、結果的に海外渡航は実質的に不可能であった。このため、旅費を使用できず、次年度使用額が生じている。 今後の計画としては、今年度内に海外調査に通常通り行けるようになった場合、その旅費として使用することを考えている。海外調査がおこなえる状況が本年度においても社会的・政治的・国際的に調わなかった場合については、再度の延長申請も検討する必要を感じている。
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Research Products
(1 results)