2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Buddhist rock monasteries in the Kucha Kingdom: Art, Archaeology, and Texts
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19K13002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
檜山 智美 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (60781755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仏教石窟寺院 / 石窟壁画 / 図像学 / 説一切有部 / 西域研究 / 学際研究 / 比丘戒本 / 顔料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、クチャの第一インド・イラン様式壁画の描かれた石窟寺院を学際的なアプローチを通して多角的に分析することにより、考古学的データ、美術史的データ、そして文献学的データを連環的に捉え、5~6世紀のクチャの僧院文化の実態を個々の学問の枠組みを超えた視点から復元的に考察することを目的としている。 第一年目となる2019年度は、当初の研究計画通り、Giuseppe Vignato教授(北京大学)及びPetra Kieffer-Puelz博士(マインツ文学学術院)との連携を取りながら共同研究を進めることが出来た。6~7月にはベルリン国立アジア美術館での資料調査と、ライプツィヒ大学における研究の中間報告及びKieffer-Puelz博士との研究打ち合わせを行ったほか、10月と12月には北京大学での研究滞在を行い、Vignato教授と共同で、考古学的データと美術史的データの分析に集中的に取り組んだ。更に、本年度中に石窟壁画の顔料分析のスペシャリストである谷口陽子教授(筑波大学)も共同研究に加わって頂けたため、石窟壁画の自然科学的側面という新たなデータを本研究に取り入れることが出来た。2月9日には龍谷大学にて国際ワークショップ「亀茲国の石窟寺院と説一切有部の仏教文化」を主宰し、三人の共同研究者を京都に招聘して、国内の関連諸分野の研究者たちと充実した議論の場を設けることが出来た。その際に得られた様々なフィードバックは、本共同研究を大きく進展させることに繋がったほか、西域研究の様々な分野と国の垣根を越えた学術交流の場を創るという、本研究課題の長期的な目標を達成するための一つの良い足掛かりとなったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一年度の研究成果は、共著"Sarvastivada Buddhism in the Early Monasteries of Kucha" (Leipzig Kucha Studies 3, New Delhi: DEV Publisher)という形で出版予定であり、元々のスケジュールでは2019年度末までに第一稿を完成させ、第二年度に手直しを行いながら2020年中の刊行を目指すという流れを想定していた。 しかし、各人のスケジュールの都合で、全共同研究者が一堂に集う国際ワークショップの場を設けられたのは2月9日となった。ワークショップ及び前後の打ち合わせにて、共同研究者同士、互いの研究内容に関する理解を深めることが出来たほか、ワークショップにご参加頂いた各分野の研究者との議論を通して、多くの新知見や新たな観点を得ることが出来た。これらの新たな視点や資料を共同研究に十分に反映させるため、第一稿の完成は2020年度にずれ込むこととなった。しかし、研究内容自体は当初の想定よりも進展しているため、研究計画はおおむね順調に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度は、初年度で得られた研究結果を共著としてまとめる作業と、研究を更に発展させるためのベルリン国立アジア美術館、ロシア国立エルミタージュ美術館、ライプツィヒ大学における資料調査・研究滞在、そして再び国内において、関連の国際ワークショップの主宰を計画していた。しかし、4月現在、新型コロナウイルスの影響にて、本年度中における海外調査と国際ワークショップの実施可否について目途が立たない状況である。そのため、場合によっては海外調査と国際ワークショップは第三年度以降に繰り越すこととし、本年度は初年度に得られた共同研究を共著として仕上げる作業を最優先で進めたい。幸い初年度から、メールやテレビ会議を通したリモート共同研究の体制を構築出来ていたため、引き続き共同研究者との連携を取りながら作業を進めてゆきたい。
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Research Products
(8 results)