2020 Fiscal Year Research-status Report
映画演出の美学と政治学:ジャン・ルノワール作品の生成論的研究
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19K13006
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
角井 誠 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90803122)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 映画 / 映画理論 / 映画演出 / 映画演技 / 作家主義 / 生成研究 / フランス映画 / ジャン・ルノワール |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度パリのシネマテーク・フランセーズ映画図書館で収集したジャン・ルノワールおよびフランス映画に関する資料の整理、分析を進め、とくに1930年代のルノワール作品の生成過程を解明するとともに、その俳優演出を身体性の観点から詳細に分析する作業を行った。また、2020年度にフランスで刊行されたPhilippe De Vitaの『ジャン・ルノワール辞典』などのルノワール関連文献の読解も進めた。しかし残念ながら、今年度、それらの成果を公表することができなかった。来年度以降、積極的に論文、発表のかたちで公にしていきたい。 研究課題に関連する業績としては、『ユリイカ』2020年10月号に、ポルトガルの映画作家ペドロ・コスタの俳優演出についての論考「生のドキュメントとしての演技:ペドロ・コスタとリハーサルの方法」を発表した。とくに、コスタの独特のリハーサル方法を「本なしの本読み」として論じることで、ルノワールの「本読みリハーサル」の方法の系譜上に位置づけることを試みた。また、リール大学教授のロラン・グイド氏による戦間期フランス映画における身体表象についての講演「機械的リズム:戦間期フランスにおけるガールズ、フォトジェニー、映画」の翻訳を東京都立大学人文社会学部紀要『人文学報』に掲載することができた。これは、ルノワール作品、とくに『チャールストン』などの無声映画作品における身体表象とも大きく関わる内容のものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症流行のため、予定されていたフランスでの資料調査を行うことができなかったため。昨年度、収集することのできた資料をもとに研究を進めているが、当初の計画に照らした場合、全体としてやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った資料分析、作品分析を、論文、研究発表を通して公にしていく。あわせて、とくに1940年代のアメリカ時代の作品について、ハリウッドの産業的、政治的諸力との折衝に注目しつつ、分析を進める。可能であれば、フランスないしアメリカでの資料調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
フランスでの調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染症流行のため実施することができなかった。そのため旅費や現地での資料収集として使用する予定であった予算を使用することができなった。使用できなかった助成金は、翌年度分とあわせて適切かつ有効に使用する。主な使用用途は、以下の通りである。 1)資料などの物品の購入:ジャン・ルノワール、フランス映画関連書籍など、当該研究を推進するうえで必要となる資料の購入に用いる。 2)調査旅費:実施可能な状況となれば、フランスおよびアメリカでの資料調査を行う。
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Research Products
(2 results)