2021 Fiscal Year Research-status Report
映画演出の美学と政治学:ジャン・ルノワール作品の生成論的研究
Project/Area Number |
19K13006
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
角井 誠 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90803122)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 映画 / 映画理論 / 映画演出 / 映画演技 / 作家主義 / 生成研究 / フランス映画 / ジャン・ルノワール |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、無声時代から60年代にまで至るジャン・ルノワールの作品のうち、とりわけ1930年代のフランス時代と40年代のアメリカ時代に焦点を当てて研究を行った。これまで収集、読解を進めて来た一次資料をもとに、学術発表「演技の規則 ──ジャン・ルノワール『ゲームの規則』をめぐって」(日本映像学会テクスト分析研究会)を行った。『ゲームの規則』の生成を踏まえた上で、俳優たちの身ぶり/声の演出を微細に分析することで、作品を貫くシステムを浮かび上がらせようと試みた。 加えて、『アンドレ・バザン研究』に、映画批評家アンドレ・バザンがマルセル・カルネの『陽は昇る』を分析した「マルセル・カルネ『陽は昇る』」を訳出した。カルネはルノワールと同時代に活躍した重要な作家の作品であり、バザンによるその緻密な演出の分析は本研究とも関わるものである。翻訳には解題として「批評と教育 ──アンドレ・バザンとシネクラブ運動」を付した。また、バザンに関しては、『映画論の冒険者たち』(東京大学出版会)に「アンドレ・バザン ──「不純な映画」の時代の批評家」」という論考を寄せ、ルノワール論にも大きな足跡を残したバザンの映画論の全体像を提示した。 その他、現代フランスの映画作家レオス・カラックスについて、「生と演技、現実と映画のあわいで ──『ホーリー・モーターズ』」(『レオス・カラックス 映画を彷徨うひと』フィルムアート社)を寄せた。ここでは、『黄金の馬車』などルノワール作品の主要テーマの一つである演劇/生の問題系の観点から、カラックスの『ホーリー・モーターズ』について論じた。また、ルノワールと並ぶフランス映画の巨匠ロベール・ブレッソンについて、「感覚の悲劇──ロベール・ブレッソン『たぶん悪魔が』作品解説」という小論をBlu-ray解説に寄せ、ブレッソンの演出について分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症流行のため、予定されていた海外での調査を実施することができなかったっため。初年度や代替手段で収集した一次資料、二次文献をもとに研究を進めているが、当初の研究計画に照らした場合、全体としてやや遅れているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
状況を見ながら、海外での資料調査が実施できるよう準備を進めていく。ルノワールの作品のうち、50年代以降の後期の作品について集中的に再読を進めつつ、研究をまとめあげていく。研究成果については、引き続き、論文や研究発表のかたちで積極的に公にしていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定されていた外国出張を次年度以降に繰り延べたためである。次年度は、当該年度分とあわせて、文献などの購入と海外における一次資料の調査に当てる予定である。
|