2019 Fiscal Year Research-status Report
18世紀西洋の美術解剖学史-美術解剖学とメディカルイラストレーションのつながり
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19K13009
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加藤 公太 順天堂大学, 医学部, 助教 (80734615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 美術解剖学 / 美術史 / 医学史 / メディカルイラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の調査は、18世期西洋における美術解剖学の教科書調査、および現地調査を行った。当時の主要な教材であるジャック・ガムランの美術解剖学書などからは、独創的な美術解剖学専門の教科書が編纂されていたことが窺える。現地調査では、史上最も有名な立体教材の一つであるジャン=アントワーヌ・ウードンの『エコルシェ』(在ローマ・フランスアカデミー、ヴィラ・メディチ蔵)を見学することができた。この調査結果は、『美術解剖学とは何か(仮題)』(トランスビュー、2020年予定)の一部に掲載した。現段階では、主要な作品および教材の取材が完了した段階である。 調査中、同時に見学することのできたレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿(クイーンズ・ギャラリー、英王室蔵)では、レオナルドが起伏に沿った立体的な描写を獲得するまでにおよそ30年の時間を経ていることが示唆された。この調査で得られた結果は、メディカルイラストレーションの描画技術の一例として論文としてまとめる予定である。 本研究に関連した書籍も制作進行中である。刊行予定および刊行済みの書籍としては、『美術解剖学とは何か(仮題)』(トランスビュー、2020年予定)、『ポール・リシェの美術解剖学(仮題)』(ライフサイエンス、2020年予定)、『ゴットフリード・バメスの美術解剖学(仮題)』(ボーンデジタル、2020年予定)、『エレンベルガー の美術解剖学』(ボーンデジタル、2020年)などがある。 学会発表では、2020年1月12日に行われた、日本美術解剖学会では、東京藝術大学布施英利准教授との共同発表「ダ・ヴィンチの内臓解剖図+アナトミカル・ヴィーナス」において本研究の中間報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な美術解剖学書が調査できたため、大まかな歴史の変遷が把握できた。ベルンハルド・アルビヌス、ジャック・ガムラン、ジョージ・スタッブスなど歴史の転換点となった美術解剖学書は、どれも実物の観察に基づく写実性の高さが見られた。アルビヌスに関しては、ジョン・ブリスバンや、ラヴァテルなどが教科書に引用しており、情報がどのようにして継承、伝播していったかを伺う指標となる。ジャン=アントワーヌ・ウードンのエコルシェ(筋肉模型)に関しては、理想体型が表現されていて、実際の人体像と異なる点が見出せた。こうした写実性と理想美の間の表現の揺れに関しては、通史でみた際にその時代の表現の特徴を表す可能性が高い。こうした時代的特徴に関しては引き続き詳細に調査を行い、明らかにしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症により、本年度の渡航調査が難しいため、教科書の調査を中心に行う予定である。18世紀の美術解剖学の教材に関して網羅的な調査を行い、著者や図版に関わった芸術家、著者が教鞭をとった美術学校を明らかにし、歴史の編纂を行なっていく。また描画方法などの時代様式も調査し、現代的なメディカルイラストレーションとの比較を行い当時の描写を読み解いていく予定である。 2020年度の学会発表に関しては、日本美術解剖学会、日本メディカルイラストレーション学会、日本医史学会などを予定している。
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Causes of Carryover |
渡航調査(イタリア、イギリス)を前倒しで行ったため。
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