2020 Fiscal Year Research-status Report
18世紀西洋の美術解剖学史-美術解剖学とメディカルイラストレーションのつながり
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19K13009
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加藤 公太 順天堂大学, 医学部, 助教 (80734615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 美術解剖学 / 解剖学 / 美術史 / 医史学 / メディカルイラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は令和元年度の資料収集および渡航調査をもとに書籍の執筆、翻訳を重点的に行った。歴史調査としては『美術解剖学とは何か』(2020.8 トランスビュー)として美術解剖学の歴史の概要をまとめた。この書籍の中には、イタリア、ローマとイギリス、ロンドンで調査をした18世紀の解剖模型、具体的にはフランスの彫刻家ジャン・アントワーヌ・ウードンのエコルシェ(1776)や、イギリスの著名な解剖学者であるウイリアム・ハンターのムラージュ(実物から型取りした石膏像)などである。本書には美術解剖学の教育に関わった芸術家たちの作品などを掲載している。美術解剖学の歴史が俯瞰できる一般書が日本の書籍の市場で出版されたのは初のことである。現在は第二弾となるヴィジュアル版の執筆、編集を行なっている。 その他、美術解剖学関連の翻訳や著作として、以下の書籍を出版した。『スケッチで学ぶ美術解剖学』(2020.10 玄光社)、『エレンベルガーの動物解剖学』(2020.1 ボーンデジタル)、『ゴットフリード・バメスの美術解剖学コンプリート・ガイド』(2020.8 ボーンデジタル)、『リシェの美術解剖学』(2020.12 ライフサイエンス出版)。これらの書籍は19~20世紀に出版された美術解剖学書の翻訳であるが、本文に歴史を解説する部分があるため、今回の歴史調査による裏付けによって、内容が確かなものになった。 現在も複数冊の美術解剖学関連の書籍の執筆に関わっており、これらには全て歴史調査による経験や、古典的な美術解剖学教育の内容が含まれている。古典的な教育内容というのは、例えば掲載順序などである。体幹、上肢、下肢、頭部のような記載順序は、1700年代にも使用されており、人体という夥しい情報を混乱せずにまとめるために編み出された計画方法の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で渡航調査が難しくなったため、現地でしか確認できない絵画や立体作品を撮影する調査が不可になった。例えば美術解剖学の書籍にしばしば引用された「休息するヘラクレス像」は、ロンドン王立美術院の石膏像をもとに解説する。今後、論文としてまとめていく作業が残っているが、文献調査に切り替えて編纂作業をおこなっていく。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の作業は調査を論文としてまとめる作業である。18世紀に出版された美術解剖学書のリスト、歴史順の解説、美術解剖学にか変わった芸術家または医師の略歴や成果物、解剖図などの特徴を一つにまとめていく。資料は文献および2019年度に渡航調査を行った際の現地写真などである。論文の投稿先は、日本医史学雑誌を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルル感染症により渡航調査のための費用を、一時文献および二次文献の費用へと用途を変更したため、使用額に差異が生じた。差異によって生じた次年度使用額は、令和3年度の文献調査の費用として使用する。
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