2021 Fiscal Year Research-status Report
非破壊光学調査による西洋近代絵画の技法解明と保存修復来歴の再構成
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19K13010
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田口 かおり 東海大学, 教養学部, 准教授 (60739986)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化財保存 / 保存修復 / 現代美術 / 光学調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は昨年度に引き続きコロナ禍の影響を受け、予定していた国外美術館との共同研究の実施に支障が生じた。本研究申請時に予定していた国外での実地調査は不可であったものの、国内においては複数の美術館や企業との協力のもとで収蔵作品の分析を実施することができ、またその内容について、可能な限りの情報公開を進めてきた。 2021度の特筆すべき成果として、①フィンセント・ファン・ゴッホ《ハーグ郊外の牧草地(草地、背景に新しい教会とヤコブ教会)》(丸沼芸術の森所蔵/埼玉県立近代美術館寄託)について初の光学調査を実施し、使用された絵具や過去の来歴の推測や考察を実施したこと ② 草間彌生《残骸》(草間彌生美術館所蔵)について調査を実施し、保存修復を実施したこと ③ 江戸時代の源氏物語絵巻(和泉市久保惣美術館所蔵)について、蛍光X線分析を介し使用された顔料の種類を推定したこと ④ 東海大学古代遺跡コレクション《ヒヒ神》(クラウドファンディング型社会発信研究補助計画)と連携し、本作品の保存修復を実施したこと ⑤ Chim↑Pom《VENUS》(東京都現代美術館)の調査および保存修復を実施したことなどを挙げる。 ①にかんしては、ハイパースペクトルイメージングシステムを使用し400~1700nmの波長帯を一度に計測しながら作品の下層を分析する試みを通じて、画家が作品にパースペクティブ・フレームを使用し制作を進めた痕跡を発見、可視化することができた。また、蛍光エックス線分析を行ない、明度の異なるさまざまな緑や黄色が混交する水辺の表現などでどのような絵具が用いられているかについても、採取データに基づき推測を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要でも述べたように、昨年に引き続きコロナ禍の影響は色濃く、国際的な研究体制と国外美術館との連携の実現をはかることが難しい局面があった。ただし、テート美術館(英)、ヴォルフスブルク美術館(獨)、ゴッホ美術館(蘭)、ボストン美術館(米)など、本研究を実施する上で協力を依頼している各美術館の担当者とはオンライン上でのミーティングや討議を通じ、今後の継続的な研究実施のための方策を共に探っている。ゴッホ美術館(蘭)とは、国際シンポジウムの開催にむけて協議を進めており、近年の調査成果について報告する場の創生を目指し協働している状況にある。また、研究最終年度の2022年にむけて海外学会での成果発表(CATHARSIS Conference on Architectural Theory, Humanities, Art and Research in Social or Interdisciplinary Sciences/ 2022年9月3日開催)も決定しており、論文投稿にむけての準備も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続きコロナ感染症による影響下にはあるが、オンラインで のシンポジウムの実施などを計画しているほか、国内美術館において可能な限りの調査を実施しその成果を公開することを目指す。具体的には美術館に調査機器を搬入し分析を実施する機会に加え、東海大学イメージングセンター及び技術共同管理室においては作品片をお預かりし分析するなど、様々な調査方法を併用することで作品の修復歴や技法解明のための研究を幅広く重ねていく。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症の拡大により、国外研究機関との共同研究や渡航しての研究実施、美術館での調査などが一部実施不可能となり、予算を次年度に繰り越して再度日程を調整し、研究を実施することとなった。本年度は昨年度に計画していた作品調査や分析を実施しつつ、本年度に予定をしている国内作品の調査分析 を進める。ただし、感染状況の拡大をみて、計画内容はこまめに調整を行う。
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Research Products
(10 results)