2022 Fiscal Year Annual Research Report
非破壊光学調査による西洋近代絵画の技法解明と保存修復来歴の再構成
Project/Area Number |
19K13010
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田口 かおり 東海大学, 教養学部, 准教授 (60739986)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保存修復 / アーカイブ / 光学調査 / 技法研究 / 来歴の解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究機関全体を通じて、国内では東京都現代美術館・豊田市美術館・ポーラ美術館・埼玉県立近代美術館館をはじめ多くの美術館と連携し、国外においてもテート・モダン・ワシントンナショナルギャラリー・大英博物館・ゴッホ美術館など諸機関からの助力を得て、主に近代絵画を中心に扱いながら美術作品の来歴の解明、技法研究および保存修復のケーススタディを積み重ねてきた。研究成果の蓄積によって、美術館、大学、アトリエが主催するシンポジウムや学術集会、国際機関より招聘を受け、講演や研究会へも多数参加する運びとなった。産学連携の研究拠点である東海大学イメージング研究センター及びマイクロ・ナノ研究開発センターにおいても多様な光学調査が実施でき、文化財調査用機材の制作改良についても、株式会社堀場員ステックに依頼する形で共同研究を進めることができた。最終年度である2022年度の成果として、完全解体が決定された神奈川県小田原市市民会館(昭和37年開館-令和3年閉館) の壁面に描画された西村保史郎(1915-2015)制作作品(主題不詳)、通称《赤色壁画》《青色壁画》(1962)の保存と修復・技法研究・保存プロジェクトおよび全工程の情報公開を挙げる。作品解体前に作品の一部を壁面から「剥がし」第二の支持体上に「移す」修復作業を選択し、市の歴史の一端を担う文化財でもある本作品の部分的なレスキューを行い、かつその成果を広く展示公開することを目指した。本作品解体前に実施した技法分析のための光学調査の成果および作品解体-修復-保存までの全記録写真と映像を公開する試みを通じて、失われた作品の「記憶」を保存し「記録」する試みを実践することができた。
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Research Products
(10 results)